ふく)” の例文
太陽の光線が直接に頭を射て脳充血が起る、またその光線が眼の中に入って眼を痛める。あるいは乳を無暗にふくませ過ぎて胃腸病を多くする。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
笹村は見向きもしなかったが、乳房をふくませているお銀の様子には、前の時よりも母親らしい優しみが加わって来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
痛快つうくわいだ! ……よろしい、おにちまひなさい、と景気けいひをつけて、ふとつたやつを、こんがりと南京なんきん中皿ちうざら装込もりこむだのを、わたしをつけて、大事だいじむしつて、はしふくめたんですが
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今一つのヒッポマネスは往々新産の駒の額に生えいるこぶで、色なく無花果いちじくの大きさで毒あり。駒生まれてこの瘤あらば母馬直ちにいおわる。しからぬうちは決して乳ふくめず。
祈がすむと水桶の水をふくんで人形に吹きかけた。人形が動きだして畑を造え、それから種を蒔き、蕎麦が生え、蕎麦の実を粉にすると、人形を箱にしまい、その後で五個の餅を造えた。
蕎麦餅 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
愛児の不憫ふびんさ、探りなれたる母の乳房に離れて、にわかに牛乳を与えらるるさえあるに、哺乳器のふくみがたくて、今頃は如何いかに泣き悲しみてやあらん、なれが恋うる乳房はここにあるものを
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ふくめるを吐きて子にくらわしめ
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長い病院生活のあいだ、ろくろく母親の乳房もふくませられたことなしに、よそから手伝いに来てくれている一人の女と女中の背にばかり縛られていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
愛児の不憫ふびんさ、さぐりなれたる母の乳房に離れて、にはかに牛乳を与へらるゝさへあるに、哺乳器のふくみがたくて、今頃は如何いかに泣き悲しみてやあらん、なれが恋ふる乳房はこゝに在るものを
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)