吊上つりあ)” の例文
ヘリコプターがとんできて、空中吊上つりあげのはなわざをやったことは、牛丸少年の話だけで、それを証明するものがなかった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
製品の価格を不法に吊上つりあげ、大多数の消費者たる無産階級を層一層物価の暴騰ぼうとうに由ってくるしめる結果を生じます。
階級闘争の彼方へ (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
更に畚に乗せて再び吊上つりあげると、今度もまた中途から転げ落ちた。お杉の霊魂たましいこの窟を去るのを嫌うのであろう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから、上に吊上つりあがった腕をブラブラさせ、悟浄の足もとまでよろめいて来ると、かれを見上げて言った。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
嚴重に掛けられた筈の掛金が、誰も手を加へないのに、獨りで上へ吊上つりあげられて、カチヤリとはづれると、佛壇の扉は、中から押されるやうに、サツと八文字に開いたのです。
すると——甜菜てんさい畑の向うのところを、一人の婦人がさんばら髪になって眼を吊上つりあげ、まるで見えぬ手で引摺られるように、よろよろと殺生谷の方へよろめいて行くのが見えた。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それでさ、あの万沢まんざわとかいう男が小山すみれ嬢をそそのかして、仔猫利用の吊上つりあげ装置を作らせたんだと解釈かいしゃくする
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「馬鹿にしてるよ。」と、お葉は蒼い顔をいからして、眼を吊上つりあげた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
長いさんばらの散らし髪が顔から肩をすべってだらりと垂れ下り、青白いせた手を、こう……前へ泳がしている、半面どす黒い血に染った顔で歯をくいしばり、眼を三白に吊上つりあげた凄惨せいさんな表情である
風流化物屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そんなことなら、僕はきゃッなどとはずかしい声を出しやしません。その仔猫たるや、紐でぶら下げられたのでもなく、風船で吊上つりあげられているのでもなく、宙にふわふわと……」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)