合乗あいのり)” の例文
旧字:合乘
電車のない夏の炎天を壱岐殿いきどの坂下まで歩いて紅葉はヨボヨボじいさんの二人乗を見付け、値切ねぎり倒して私と二人で合乗あいのりして行くと
まるっきり今日はあぶれちまって、からいて帰るかと思っていた処で、何うか幾許いくら待っても宜しゅうございます、閑でげすから、お合乗あいのりでへい
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
様子に見せまいと思っても、ツイ胸が迫って来るもんですから、合乗あいのりで帰る道で私の顔を御覧なすって
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自動車のかりそめの合乗あいのりに青年と信一郎とは、恐ろしい生死の活劇に好運悪運の両極に立ったわけだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それから毎日、一雄はお医者さまからくれた青い眼がねをかけて、おばあさんと二人——まだ電車のない時分でしたから——合乗あいのり人力じんりきで、眼科の病院へ通いました。
祖母 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
貴嬢あなた合乗あいのりなら行てもいいというのがお一方ひとかた出来たが承知ですかネ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
なんにしろ跣足はだしじゃアけません、何に仕ましょうか、車をそう云ってお呉れ、此の嬢ちゃんと合乗あいのりに乗って三人に成ります、それ故に三人乗ってそろ/\いて
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
深更の大路に車のきしる音が起って、みやこの一端をりんりんとしてひびき、山下を抜けて広徳寺前へかかる時、合乗あいのり泥除どろよけにその黒髪を敷くばかり、蝶吉は身を横に、顔をあおむけにした上へ
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、一寸ちょっとお待ちなさい。御相談があります。実は、熱海あたみまで行こうと云う方があるのですが、その方と合乗あいのりして下さったら、如何でしょう、それならば大変格安になるのです。それならば、七円だけ出して下されば。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
がらがらと通ったのは三台ばかりの威勢の腕車くるま、中に合乗あいのりが一台。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)