口前くちまへ)” の例文
オリヴァさんの周圍には、いつも求婚者や口前くちまへの好い男が大勢ゐるでせうから、一月たない内に僕の影なんぞはあの人の心から消えて了ひますよ。
白猿はくゑん余光よくわう抱一はういつ不白ふはくなどのもとへも立入たちいるやうになり、香茶かうちや活花いけばなまで器用であはせ、つひ此人このひとたちの引立ひきたてにて茶道具屋ちやだうぐやとまでなり、口前くちまへひとつで諸家しよけ可愛かあいがられ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
あてになるものか。』と女は鼻で笑つて、『お前さんの口前くちまへの巧いにもあきれるよ。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
女をだますやうな男はどんなやさしい顏して、どんなに口前くちまへが旨いだらう?
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
腕白わんぱくな菊五郎よ、汝も口前くちまへばかりは名優の面影がある。