取逆上とりのぼせ)” の例文
妹分といふことにして、三年も唯でコキ使はれた上、深く言ひかはした好い男の安五郎を横取りされると、十八や十九の娘でも、ツイ取逆上とりのぼせせるよ。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
其時そのとき茫乎ぼんやりと思ひ出したのは、昨夜ゆうべの其の、奥方だか、姫様ひいさまだか、それとも御新姐ごしんぞだか、魔だか、鬼だか、おねやへ召しました一件のおやかただが、当座はただかっ取逆上とりのぼせ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
水天宮様ばかりをめて、米友に一言の挨拶をもしなかったその子の親たちをはじめ近所の人々とても、決して米友を軽蔑してそうしたわけではなく、驚きと喜びに取逆上とりのぼせ
と云ひければ忠兵衞はかしらをあげ長庵殿には取逆上とりのぼせしか貴殿の云ふ事少しも分からず申せば長庵聞て譯らぬとは麁言そごんなり貴樣こそ取逆上とりのぼせしとみえたり密夫まをとこたりと我口より云て居る此長庵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
藤「そんな事を云うものじゃアない親父は少し取逆上とりのぼせて居ますので」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし道の通り合せに、真直に見て歩く女があつたからといつて、何処の誰ぞとも知らないうちは余り取逆上とりのぼせてはならない。さういふ折には一度急ぎ足に女を追越して、しづかにあとを振かへつてみるがいい。
懷胎みもちの樣子はなかつたが、取逆上とりのぼせて少し氣が變になつたらしく、晝でも行燈を點けて置いたり、草履を縁側へブラ下げたり、無暗に逃出さうとしたり
懐胎みもちの様子はなかったが、取逆上とりのぼせて少し気が変になったらしく、昼でも行灯を点けておいたり、草履を縁側へブラ下げたり、無暗むやみに逃出そうとしたり
一方では伊賀井の殿樣の奧方——彌生の方は、御主人の氣違ひ沙汰に取逆上とりのぼせて、これは本當に氣が變になり、一と間に押し込められて、ていのいゝ座敷牢暮しをするやうになつた。
一方では伊賀井の殿様の奥方——弥生の方は、御主人の気違い沙汰に取逆上とりのぼせて、これは本当に気が変になり、ひと間に押し込められて、ていのいい座敷牢ざしきろう暮しをするようになった。
文六は幾代を幸吉に取られる口惜しさに取逆上とりのぼせて、齒をいて二人を呪ふのです。
文六は幾代を幸吉に取られる口惜しさに取逆上とりのぼせて、歯をいて二人を呪うのです。
取逆上とりのぼせて自害するといふこともありさうだぜ」
この相模さがみ女も、すつかり取逆上とりのぼせてをります。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)