取着とッつ)” の例文
ごうとなったのが、ちょうど九時半、ちとすぎ、かれこれ十時とも申しまして、この山の取着とッつきから海岸まで、五百に近い家が、不思議に同一おなじ時刻。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新造に取着とッつかれるおぼえはないから、別に殺そうというのじゃあなかろう、生命いのちに別条がないときまりゃ、大威張りの江戸児えどっこ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
取着とッつきに、ひじいて、怪しく正面にまなこの光る、悟った顔の達磨様だるまさまと、女の顔とを、七分三分に狙いながら
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
直ぐそこの長火鉢を取巻いて、三人ばかり、変な女が、立膝やら、横坐りやら、猫板に頬杖やら、料理の方はひまらしい。……上框あがりかまちの正面が、取着とッつきの狭い階子段はしごだんです。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お聞き、前刻さっき国手せんせいが来なさりがけに、露地口を入ろうとして、ふっと、そら、そこの松家さんの羽目板を見なさるとね、この紙が、ちょうど、入口の取着とッつきの処に貼りつけて有ったとさ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでね、貴方、その病気と申しますのが、風邪を引いたの、おなかを痛めたのというのではない様子で、まあ、申せば、何か生霊いきりょう取着とッついたとか、狐が見込んだとかいうのでございましょう。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つい夏の取着とッつきに、御主人のいいつけで、清酒すみざけをの、お前様、沢山たんとでもござりませぬ。三樽みたるばかり船に積んで、船頭殿が一人、嘉吉めが上乗うわのりで、この葉山の小売みせへ卸しに来たでござります。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と話はきまったはずにして、委細構わず、車夫は取着とッついて梶棒かじぼうを差向ける。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吃驚びっくり亀の子、空へ何と、爺どのは手を泳がせて、自分のいた荷車に、がらがら背後うしろから押出されて、わい、というたぎり、一呼吸ひといきに村の取着とッつき、あれから、この街道がなべづるなりに曲ります、明神様
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何の因果だか、もうもう猫にまで取着とッつかれる。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)