厩舎きゅうしゃ)” の例文
旧字:厩舍
まるで、都会の厩舎きゅうしゃから高原の牧場へ放された馬のようではないかと思っていると、お茶の迎いらしく幼い足音が、響いて来た。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いつか姉妹きょうだいに最初に案内された厩舎きゅうしゃへもいってみました。これは以前のままに残っていましたが、もうそこに馬は、一頭もいませんでした。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
袖垣そでがきにバラをからませた鉄柵の門から内を覗くと、中央に広い草花のガーデンが見え、両側が長い厩舎きゅうしゃとなっていて、奥に宏壮な洋館があった。
くさ厩舎きゅうしゃの腐り馬とわらわれていた馬が見習騎手の鞭にペタペタしりをしばかれながらゴールインして単複二百円の配当
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
日の照らない処を、厩舎きゅうしゃかげのあたりの、雪のない草はらを、そろそろ連れて歩いて呉れ。一回十五分位、それから飼料をやらないで少し腹をかせてやれ。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
敬二郎は厩舎きゅうしゃの中へ引き返した。そして、彼は激しく躍る胸をじっと抑えるようにして、その電報を開いた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
馭者のセリファンは厩舎きゅうしゃの方へ馬の始末をしに行き、従僕のペトゥルーシカは、まるで犬小舎いぬごやのような、いやに薄暗い小さな控室ひかえしつのなかを取りかたづけはじめたが
へびたちは遠く去ったらしい、洞の付近には人影もなく、厩舎きゅうしゃ養禽場ようきんじょうも、なんらの異状がない、湖のほとり、川辺のだちょうの森も、かくらんされたあとは見られなかった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しかし島崎は自己の才分を生かしていつか悧巧りこうに波止場ゴロなどとの縁を切って、今では山の手に庭園ガーデン付きの宏壮な邸宅や厩舎きゅうしゃをもって、取り澄ましている。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一体この物語は、あんまりあわれ過ぎるのだ。もうこのあとはやめにしよう。とにかく豚はすぐあとで、からだを八つに分解されて、厩舎きゅうしゃのうしろに積みあげられた。雪の中に一晩けられた。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
紀久子は驚きの声を上げて、第三厩舎きゅうしゃの前に足を止めた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
山裾の北方から東にかけての兵舎や厩舎きゅうしゃなども各所に煙をき、火薬であろう、折々、炸爆さくばくする音もまじえて、生木の燃える熱風で、血臭い大地に、一時、木の葉の灰を雪のように降らせた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
細長い厩舎きゅうしゃには、悍気かんきのつよい軍馬がたくさん顔をそろえていた。これもみな戦陣の功労者である。秀吉の顔を見ると、わかるのか、怖るるのか、いなないたり、ひづめを鳴らしたり、さわがしいことおびただしい。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)