午睡ごすい)” の例文
公園のベンチの上で午睡ごすいの夢からさめたら、私の顔のさきにその犬の顔があった。私が顔を覆うていた本はベンチの下に落ちていた。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
「眼が赤いのは、じつは今、午睡ごすいをとっていたからです。ああそれで思い出した。張順に起されたとき、私は夢を見ていたようだ……」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太陽は少しの午睡ごすいのあとのようにどこか青くぼんやりかすんではいますがたしかにかがやく五月のひるすぎをこしらえました。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そこで仕方がないから、とうの枕をして、また小説を読んだ。そうして読みながら、いつか午睡ごすいをしてしまった。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
長十郎はその日一家四人と別れのさかずきかわし、母のすすめに任せて、もとより酒好きであった長十郎は更に杯を重ね、快く酔って、微笑を含んだまま午睡ごすいをした。
売薬師が看板を金にして大いに売りひろめ、山師の帳場に空虚なる金箱を据え、学者の書斎に読めぬ原書を飾り、人力車中に新聞紙を読みて宅に帰りて午睡ごすいを催す者あり
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
されば貴人の馬車富豪の自動車の地響じひびき午睡ごすいの夢を驚かさるる恐れなく、夏のゆうべ格子戸こうしどの外に裸体で凉む自由があり、冬の置炬燵おきごたつに隣家の三味線を聞く面白さがある。
食後に少し午睡ごすいをとった後、洗面の用意を命じた彼は、両方の頬を代る代る、中から舌でつっぱりながら、おそろしく長いこと石鹸で磨き立てたが、やがて給仕の肩からタオルをとると
ちょうど今午睡ごすいから覚めたダアワは僕を散歩につれ出そうとしている。では万里ばんり海彼かいひにいる君の幸福を祈ると共に、一まずこの手紙も終ることにしよう。
第四の夫から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
太陽たいようはいまはすっかり午睡ごすいのあとの光のもやをはらいましたので山脈さんみゃくも青くかがやき、さっきまで雲にまぎれてわからなかった雪の死火山しかざんもはっきり土耳古玉トルコだまのそらにきあがりました。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
きょうも妻は不相変あいかわらず麦藁むぎわらの散らばった門口かどぐちにじっとひざをかかえたまま静かに午睡ごすいむさぼっている。これは僕の家ばかりではない。どの家の門口にも二三人ずつは必ずまた誰か居睡いねむりをしている。
第四の夫から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)