さじ)” の例文
彼女は、自分の腕にいつくこともあった。と、そこにパッとにじみだして開いてくる命の花のはなやぎを、どんなふうに色に出したら写せるかと、みつめながらさじをなげた。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この男木作りかとそしる者は肉団にくだん奴才どさい御釈迦様おしゃかさまが女房すて山籠やまごもりせられしは、耆婆きばさじなげ癩病らいびょう接吻くちづけくちびるポロリとおちしに愛想あいそつかしてならんなど疑う儕輩やからなるべし、あゝら尊し、尊し
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
医師のさじたぐいに非ず、これを想い、またこれを思い、ただに三思のみならず、三百思もなお足るべからずといえども、その細目の適宜を得んとするは、とうてい人智の及ぶところに非ざれば
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
露国の古話に蛇精が新米寡婦方へその亡夫に化けて来て毎夜ともに食い、同棲して、あさに達し、その寡婦火の前のろうのごとくせ溶け行く、その母これに教えて、かれと同食の際わざとさじおと
婢「そう/\、あゝ知れませんよ、時々さじで出して甜めました事がありましてね、一遍知れたよ、私が口のはた附着くッついていて、少しの間板の間に坐らせられた事が有りましたよ………大層結構な、これは福寿庵の、大層お上手ですこと」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)