勧説かんぜい)” の例文
けれど、そういう勧説かんぜいを持って行っても、藤次が予算していたように、おいそれと寄進帳へ筆をつけてくれるのはすくない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平壌敗れたりとの報が、京城に達したので、宇喜多秀家は三奉行と相談して、安国寺恵瓊えけいを開城へ遣して、小早川隆景に、京城へ退くよう勧説かんぜいした。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
私の勧説かんぜいしてみたいのは、精細なる限地的の調査に伴のうて、ぜひとも遠近の各地方の事実を比較することである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
押問答をしているうちに、一人の青年がそう言って庸三を勧説かんぜいした。彼は頑固がんこに振り切るのもいさぎよくないと思ったので、彼らの好意にまかせることにした。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
のぞみありげな勧説かんぜいにも一抹いちまつの疑いを持ち、不安にかられる心情を無視出来ますまい、阿賀妻さん、身どもせんえつ至極ながらえて云いますが、われら今そのわかみちに来ておる
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
わたくしは母にまさか、その通りにも言えませんから、ただ池上が勧説かんぜいしたことだけを母に申しますと、母は「ふーむ」と鹿爪らしい顔でいていましたが、顎を大きくしゃくって
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大騙おおかたりじゃ。針のみぞから天を覗くようなことを言い前にして、金を集めようという、大騙りじゃ」と、中には市九郎の勧説かんぜいに、迫害を加うる者さえあった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼は今少し何とか景気を盛りかえすまで、麹町こうじまちの屋敷にとどまっているように、くどく彼女に勧説かんぜいしたのであったが、小夜子は七年間の不自然な生活も鼻についていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
報徳社などもこのチョコ米を勧説かんぜいした。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
対馬の宗義智そうよしともが、いやがる朝鮮の使者を無理に勧説かんぜいして連れて来たのは天正十八年七月である。折柄おりから秀吉は関東奥羽へ東征中で、聚楽じゅらくの第に会見したのは十一月七日である。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
形勢暗澹あんたんたるを憂いた尾、越、土の三侯は、慶喜が大阪にいては、いよいよ朝幕の間が疎隔するばかりであるから、再度おだやかに上京したらどうかと、勧説かんぜいしたが、幕府側の識者は
鳥羽伏見の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼等の父は嘗つて藩の宗門改めに会って斬られた者達であるが、角蔵、三吉は各々の父の髑髏どくろと天主像を秘かに拝して居たのを、此頃に至って公然と衆人に示して、勧説かんぜいするに至った。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
有王が、涙を流しての勧説かんぜいも、どうすることもできなかった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)