刻苦こっく)” の例文
肩も腰も頑丈で、この肉体がどんな刻苦こっくに耐えて来たか充分に察しられるが、全体の感じはどことなく弱々しく、挙動もたいへんに神経質だった。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
彼の十数年にもわた刻苦こっく精神がをむすんで、心、体、理の基本を一系に統合し、ここに、柳生新陰流やぎゅうしんかげりゅう——なるものの大成もほぼまっとうされたかと思われる頃
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何でも朋友に相談をして見ようとう思うたが、この事も中々やすくないとうのは、その時の蘭学者全体のかんがえは、私をはじめとして皆、数年すねんあいだ刻苦こっく勉強した蘭学が役に立たないから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
せめて土産みやげに敵情でも探つて来れば、まだ言訳いいわけもあるんだが、刻苦こっくして探つても敵の用心が厳しくつて、残念ながら分らなかつたといふならまだもじょすべきであるに、先に将校にしらべられた時も
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人の目になど見えない所に、そう云う人の刻苦こっくと精進はあるのだったが、深夜の寒燈のもとに、血をきながら修史何十年の悲壮な努力の姿は、誰も山陽に見ていなかったのである。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どの鉱山やまも掘れるだけほりつくされていて、一パーセントの金さえ単離させることができなかった。熱情と刻苦こっくにかかわらず、この一年のあいだなんらむくいられるところがなかったのである。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
見習えよ。いつまでも家臣どもに甘やかされて駄々ばかりこねている和子様であってはならぬぞ。新介の刻苦こっくに見習うて、朝はつとに起き、馬術、弓道の稽古けいこに励み、読書もせねばならぬぞ
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)