初鰹はつがつを)” の例文
おな白石しろいし在所ざいしようまれなる、宮城野みやぎの信夫しのぶふを、芝居しばゐにてたるさへなにとやらむ初鰹はつがつをころうれしからず。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
四月三十日、初鰹はつがつをにも、時鳥ほとゝぎすにも興味はなくとも、江戸の初夏の風物は此上もなくさはやかな晝下がりです。
朝比奈が曽我を訪ふ日や初鰹はつがつを
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
初鰹はつがつを高時犬にくらはせる
(新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
江戸の町々がすつかり青葉につゞられて、時鳥ほとゝぎす初鰹はつがつをが江戸ツ子の詩情と味覺をそゝる頃のことです。
さばを、さば三番叟さんばそう、とすてきに威勢ゐせいよくる、おや/\、初鰹はつがつをいきほひだよ。いわし五月ごぐわつしゆんとす。さし網鰯あみいわしとて、すなのまゝ、ざる盤臺はんだいにころがる。うそにあらず、さばぼらほどのおほきさなり。あたひやすし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「わかつたよ、——眞つ直ぐに行け。明神下には初鰹はつがつをで一杯用意してある筈だ」