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初鰹
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はつがつを
同じ
白石の
在所うまれなる、
宮城野と
云ひ
信夫と
云ふを、
芝居にて
見たるさへ
何とやらむ
初鰹の
頃は
嬉しからず。
四月三十日、
初鰹にも、
時鳥にも興味はなくとも、江戸の初夏の風物は此上もなく
爽かな晝下がりです。
江戸の町々がすつかり青葉に
綴られて、
時鳥と
初鰹が江戸ツ子の詩情と味覺をそゝる頃のことです。
鯖を、
鯖や
三番叟、とすてきに
威勢よく
賣る、おや/\、
初鰹の
勢だよ。
鰯は
五月を
季とす。さし
網鰯とて、
砂のまゝ、
笊、
盤臺にころがる。
嘘にあらず、
鯖、
鰡ほどの
大さなり。
値安し。
「わかつたよ、——眞つ直ぐに行け。明神下には
初鰹で一杯用意してある筈だ」