切迫せっぱ)” の例文
余計な文字をもてあそんでいる余裕ゆとりが、まったくありませんから、切迫せっぱ詰まった書き方になって、読みにくいでしょうが勘弁して下さい。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
実は切迫せっぱつまった事で、金はる、借りるところはなし。君がいると、一も二もなく相談するのだが、叔母さんには言いにくいだろうじゃないか。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
あなたが、頭に大きな傷をうけて、もう死ぬしかないという切迫せっぱつまったときに、ここから僕の脳髄の一部を裂いて、あなたの脳につぎあわせたんです。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
随分それまでにもかれこれと年季を増して、二年あまりの地獄のくるしみがフイになっている上へ、もう切迫せっぱと二十円。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
多くは雨が降ろうが日が照ろうがブラブラ遊んでいて、いよいよ切迫せっぱつまって初めて不精不精に印袢纏しるしばんてんをひっかけたり破ればかましわをのしたりして出かけた。
切迫せっぱ詰って彼奴あいつが逃げ出すかも知れないから、逃げたらば表に二人も待ってゝ、にげやがったら生捕いけどって逃がしてはならぬぞ、えゝ、初めは柔和な顔をして掛合うから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お庄は中村や芳太郎の手からのがれたとき、切迫せっぱつまって来れば、自分はどこへ行く体か解らないと思った。そして、その方がどんなに自由だか知れないとも考えた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それで河野は、吉岡に頼るのが心苦しかったけれど、切迫せっぱつまった余り思い切って出かけてみた。
好意 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
大七の場、金五郎のたしなめを上手にてきき居て切迫せっぱつまりしところにて、百両包を投げ出し「なんにも言はずとこの金を、そつくりかへしておしまいなせえ」のところこたへたり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
さんざんに敗けいくさとなり、もうほかに手段もない切迫せっぱつまッての思いつきから
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
切迫せっぱつまってはタンカラでも稼いだり、それこそありとあらゆる修行をしたあげく、立寄らば大木のかげ、改めていまの師匠のところへいゝ加減ふみしだいた草鞋をぬいだのだったが
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
こんな惨めな残酷むごたらしい、切迫せっぱ詰まった運命に直面した人間に、なんの感傷なぞがあるものでしょうか。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
切迫せっぱつまったはめというのは、そういう状態の時をいうのだ。そしてその推移がひそかに行わるれば行われるほど、人の注意を逃れることが多ければ多いほど、益々危険が大きくなる。
愚かな一日 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「佐平の声に驚いて、吾々が駈けつけてみた時は、もうさくを破っている切迫せっぱで」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絶体絶命、縄をうけるか切りぬけるか、このふたつよりない切迫せっぱ
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)