切詰きりつ)” の例文
湯治たうぢ幾日いくにち往復わうふく旅錢りよせんと、切詰きりつめた懷中ふところだし、あひりませうことならば、のうちに修善寺しゆぜんじまで引返ひきかへして、一旅籠ひとはたごかすりたい。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
切詰きりつめた予算だけしか有しておらぬことであるから、当人は人一倍困悶こんもんしたが、どうも病気には勝てぬことであるから、しばらく学事を抛擲ほうてきして心身の保養につとめるがいとの勧告に従って
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
即ち、自分の犯罪の痕跡という痕跡、証拠という証拠をことごとく自分の手で調べ上げて、どうしても自分が犯人でなければならぬ事が、云わず語らずの中にわかる……という紙一枚のところまで切詰きりつめる。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この辺は冬が永いので後先あとさき切詰きりつめて三月と九月にしている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)