切歯せっし)” の例文
旧字:切齒
とりわけ、近世の歴代中でも、比類なき英邁えいまいな質をもってお生れあったという今上きんじょう後醍醐とすれば、切歯せっしのおちかいも、当然なわけで
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其からは落第の恥辱をすすがねばかぬと発奮し、切歯せっしして、扼腕やくわんして、はたまなこになって、又鵜の真似を継続してった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
徳川氏、政権をとること三百年、士を養うこと八万騎、今日この頃になって、ついに一人の血性けっせいある男子を見ることができない。雲井なにがしはそれを切歯せっししている。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鉄石たわむれニ曰ク、家里松濤ハ心両端ヲ挟ム。則チ身首しんしゅところヲ異ニセシムルモもとヨリ惜シカラザルナリト。席末誠県ニ切歯せっしスルモノアリ。コレヲ聞キ喜ンデ即夜刀ヲ抜イテソノ門ニ闖入ちんにゅうス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
万世の後までも悪逆の名を流させようとする行為である、北条ほうじょう足利あしかがにもまさる逆謀というのほかはない、これには切歯せっし痛憤、言うべき言葉もないという意味のことが書いてあったという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大盤石だいばんじゃくに挟まれたるが如く、ひたすらに気息を張つて唖唖ああ切歯せっしするのみ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
切歯せっしせざるを得なかった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いくら切歯せっししてみても、又、腕に自信があっても、わずか三名では、吉良の門内へ斬り込んで幾十歩駈け込めるかに問題は止まる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつ手ぬるく実に切歯せっしえないとされた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
許田きょでんに鹿を射る事——誰か朝廷の臣として、切歯せっししない者がありましょう。曹操が逆意は、すでに、歴々といえまする。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしていかに血涙をながすも、切歯せっし痛憤するも、その両方の無事を計るような名案は生れて来なかった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかに各〻が切歯せっししたところで、彼が正陣を布いているうちは、打ち破ることはできない。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、切歯せっしして、忿怒ふんぬの余勢を、あたりの幕将たちへも、吐かずにいられない容子ようすだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
作左衛門は切歯せっしして云った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)