切創きりきず)” の例文
もっと護謨ごむ同様に紳縮のびちゞみする樹皮きのかわなれば其穴はおのずかふさがりてだ其傷だけ残れるを見るのみなれば更にくつがえしてしもの端を眺ればこゝには異様なる切創きりきずあり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
死後切創きりきずが加えられる以前に、易介は自企的窒息を計ったのではないか——などという、すこぶる市井の臆測に堕したような異説も現われたくらいである。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しかし腕に切創きりきずのある上田が捕へられて見れば、海間の心づくしも徒事とじになつた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あの湯は切創きりきずその他に特効があるといううわさがにわかに広まったのでございます。
鰻に呪われた男 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
打身うちみは打身のように、切創きりきずは切創のように、気絶したものは気絶したもののように、繃帯を巻くべきものには巻かせたり巻いてやったり、膏薬こうやくを貼るべきものには貼らせたり貼ってやったり
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さらに、その要点に言及すれば、何故に鏘々そうそうたる法医学者達が、二つの切創きりきずがともに中以上の血管では動脈を避け、静脈のみを胸腔にかけてえぐっているのに気付かぬのであろうか。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
背中左之方ひだりのほう一寸程突創つききず一箇所、創口腫上はれあがり深さ相知不申あひしれまをさずえり切創きりきず一箇所、長さ三寸程、深さ二寸程、同所下之方しものほうに切創一箇所、長さ一寸五分程、深さ六分程、左耳之わきに切創一箇所、長さ一寸
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
最初眼についたのは、咽喉につけられている二条の切創きりきずだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)