出鼻でばな)” の例文
そして、これからその源次を代官所へ曳いて、ことわりに行こうと思っていた出鼻でばなだったので、向うも、合点がゆかない様子である。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さりとは仰々しい騒ぎようかなと、いざ笠をかぶって店を出ようとするその出鼻でばなでこの騒ぎであるから、足を留めないわけにはゆきませんでした。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
グピーの図を見せると、「これは八大山人はちだいさんじん焼直やきなおしだね」とすぐ見破ってしまうし、コスモスの絵は矢車草やぐるまそうかと思ったというので、いささか出鼻でばなを折られた。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
岨道そばみちを登り切ると、山の出鼻でばなたいらな所へ出た。北側はみどりをたたむ春の峰で、今朝えんから仰いだあたりかも知れない。南側には焼野とも云うべき地勢が幅半丁ほど広がって、末はくずれたがけとなる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山の出鼻でばなを、廻り切って仕舞うまで前方は、見透みとおしが、利かなかった。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
法木ほうぎ島船しまぶね、小船、浦の真船まふね出鼻でばなを見れば、あねいもとも皆乗り出して、をおし押し、にまきの先に、おせなおせなとさぶかぜ通れば、凪もいし、かつまを通れば、せじた宵烏賊、せがらし宵烏賊
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
秀吉の痛嘆は、自分へのののしりだった。家康に出鼻でばなをくじかれた恥に燃えた。そして
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)