凡事ただごと)” の例文
凡事ただごとでないその面持おももちを遠方からも察したので、わざと二人は、しばらく彼の意のままにいて、言葉をかけずに待っていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人々漸く聞きつけて、凡事ただごとならずと立出でて見れば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
滝川一益を相手にさりげなく話していた光秀のすがたへ、じっと注いでいた信長の眼は、すでに凡事ただごとと見えなかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とは、京都の庶民たちも、うすうす変には感じていたが、凡事ただごとでない騒ぎは、去年から年の暮までもつづいていた——
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつてこんな語気を吐かない介三郎の口からそれがいわれているので、主客の感情が、凡事ただごとでないことはわかる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「中国の将来はいよいよ多難だろう。彼の如き者が現われる時代では——。今や世は凡事ただごとの戦乱ではない」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬乗りばかまくくり上げ、物々しげに脚絆きゃはんまでつけているのだ。朝から駆け廻っているらしい疲れた顔や背中に、雪泥がねあがっているのも凡事ただごとの姿ではなかった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、笹子ささご、初狩、岩殿いわどのあたりの草深いそんな旅籠屋はたごやでも、この頃の客の混みあう様は、凡事ただごととも思えない。そしてその多くが上りよりも、下りの客だった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「宮のお使いとは、何事かわかりませんが、ご赦免と共にあれば、凡事ただごとではありますまい。時節到来と覚えます。何で小さな感情などにとらわれている事があるものですか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「篝、松明はおろか、耳をすますと、馬のいななき、馬蹄の戛々かつかつ、木之本を中心として、まことに、凡事ただごとならぬ物声にござりまする。早や早や御対策なくてはかないますまい」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひしぎつけられた少年の、なかば、物狂わしくなった叫びとも聞かれたが、宗清は何か凡事ただごとでない感動に打たれたらしく、はっと答えぬばかり正直な態度で、すぐ鞍から跳び降りた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うれしや、神の御加護か、御仏みほとけのひきあわせか、ここで武蔵めに会うとは、よも凡事ただごとであろうはずはない。日頃の信心が通じて、婆の手で、神仏が仇を討たせてたもるのじゃ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わからないが、しかし事態の凡事ただごとでないことだけは感じる。それに、宮本武蔵の一の弟子、青木城太郎ともあるものが、老婆の細肱ほそひじに刎ねとばされて引っ込んでいられたものではあるまい。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうする、各〻。……倉奉行はちと職ちがいだが、凡事ただごとではないらしい」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこか四人の影に、凡事ただごとならぬものが、けものの眼にもわかるとみえる。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きのうの天変は凡事ただごとではありません。お気づきになりましたか」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(さては、呉がうごき出したのではないか。凡事ただごとではあるまい)
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ、凡事ただごとではないらしい。さ、事情わけをお話し」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何も見えないが、凡事ただごとではないぞ。……戦争か」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(きょうのお書き物は、凡事ただごとならじ……)
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
凡事ただごととも思えない吠え方なのである。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これはいよいよ凡事ただごとではない」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思うに、これは、凡事ただごとではない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
凡事ただごととも思われない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)