凝脂ぎょうし)” の例文
後ろ手にほんの形ばかり縛られた女は、灯影ほかげに痛々しく身をくねらせて、利助の荒くれた手に、遠慮会釈もなく凝脂ぎょうしを拭かせております。
淫蕩いんとうな女体が、きこめられた春情香の枕をはずして、歓喜の極に、一かん、死息を怪しましめ、一きょう凝脂ぎょうしを汗としてうるおす
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その白さがまた、凝脂ぎょうしのような柔らかみのある、なめらかな色の白さで、山腹のなだらかなくぼみでさえ、丁度雪にさす月の光のような、かすかに青い影をたたえているだけである。
女体 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
振り乱した髪が、美しい顔から首筋へ海藻みるのごとく絡んで、真珠色の凝脂ぎょうしが、ヒクヒクと荒縄の下にうごめく様は、言いようもない、恐ろしい魅惑でした。
ぬめやかな凝脂ぎょうしは常にねっとりとその白い肌目きめからも毛穴からも男をそそる美味のような女香にょこうをたえず発散する。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
凝脂ぎょうし粉黛ふんたい、——そう言った言葉を私はプシホダの演奏から連想する。それは楊貴妃や姐妃だっきの美しさだ。粉飾と技巧の限りを尽して、外から美しさを盛り上げる方法だ。
そろそろ巧雲のたぎる思いは姿態しなにもなって、眼もともとろり、肌の凝脂ぎょうしにおい立つ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
凝脂ぎょうし豊かなくせに、異常に細そりした身体を包んで、深い歎きに身を揉むごとに、それが蜘蛛の巣に掛った、美しい蝶をさいなむように、キリ/\と全身を絞り上げるのです。
片頬をもたらせるように品を作ると、ほのかなえくぼが、凝脂ぎょうしの中にトロリと渦をまきます。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
蝋化ろうかしたような蒼白い凝脂ぎょうしに、痛々しくも残る傷を見て、多勢の人たちを眼顔めがおで隣の部屋に追いやり、父親の市兵衛といっしょに残っている、妹娘のお吉に、ささやき加減に訊くのです。
鑿をる手を休めて眺めると、眼元の涼しさ、鼻筋の素直さ、その頃流行はやった、少し受け唇のあどけなさ、それにもして、頬の肉付きの可愛らしさと、首から四肢へかけての、凝脂ぎょうしの美しさは