兇賊きょうぞく)” の例文
あわれ、何しに御身おんみはだえけがるべき。夫人はただかつてそれが、兇賊きょうぞくの持物であったことを知って、ために不気味に思ったのである。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼の片頬かたほほには見るも恐ろしいかにのような形をした黒痣くろあざがアリアリと浮きでていた。これこそうわさに名の高い兇賊きょうぞく痣蟹仙斎あざがにせんさいであると知られた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
兇賊きょうぞくがこれらの怪技の妙奥みょうおく会得えとくしていた場合を想像せよ。流石さすがの名探偵明智小五郎もこの魔術師の心理的或は物理的欺瞞ぎまんには、いたく悩まされねばならなかった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「不敵な兇賊きょうぞくめっ、うごくなっ」呶鳴った侍が、逞しい体をいきなりつけて行くと
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてこの二人の広告主の一人は、博士を昏倒こんとうせしめ、お化け鞄を奪った姓名未詳の兇賊きょうぞくであり、もう一人は例の目賀野であろうと考えていた。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なぜというに、咄嗟とっさ拳銃ピストルを引出すのは、最新流行の服の衣兜かくしで、これを扱うものは、世界的の名探偵か、兇賊きょうぞくかでなければならないようだからである。
四ツ目屋、秦野屋、雲霧なども、人間の群れ争う都会のなかへはいると、それぞれものすごい兇賊きょうぞくと化しますが、さすがに、こんな平和な人たちを見ると、自分の暗い影も忘れて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三年ほど前、大胆不敵な強盗殺人を連発して天下のお尋ね者となった兇賊きょうぞく痣蟹仙斎あざがにせんさいという男がありましたね。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二俣ふたまたの奥、戸室とむろふもと、岩で城をいた山寺に、兇賊きょうぞくこもると知れて、まだ邏卒らそつといった時分、捕方とりかた多人数たにんず隠家かくれがを取巻いた時、表門の真只中まっただなかへ、その親仁おやじだと言います、六尺一つの丸裸体まるはだか
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大胆不敵の兇賊きょうぞく痣蟹仙斎あざがにせんさいが隠れ柱の中に逃げこもうとするのを、素早く覆面探偵青竜王がムズとつかまえたと思ったが、引張りだしてみると何のこと、痣蟹の左足の長靴と
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)