ばた)” の例文
置いてきぼりにされた小山内氏は、履直げたなほしのやうにみちばたにぺたりと尻を下した。そして一念こめてじつと電車のあとを睨んだ。
本陣の前の屋根のある風呂小屋が一ヵ所見えたが、後は往来ばたにあって、誰が入浴はいろうと怪しむ者はない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばたに兎を捕るとて笹の葉をまげて細工した陷穴が二つばかりあつた。平はつひに盡きて大江山からのびた山足を踏み越えると、電光形に下りてクロタケ澤の落合に着いた。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
すし屋から外へ出ますと、戸外には木枯と云ってもよさそうな寒い風が、江戸川ばたの葉の落尽した桜並樹を吹いて居りました。私は家へ帰ると、妻をせき立てゝ洋服に着更えました。
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
という大道ばたの親切が身に沁みて忘れられぬ。
白鳥をドサリと囲炉裡ばたへ置く。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ばたの草影が
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)