かしず)” の例文
桔梗の死骸を、水底に蹴落し、なお罪のない女童やかしずきの女房たちまで、部下の残虐な処置に委して、羽鳥へ引き揚げて行ったのだった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は介山居士が千年樫の下に草庵を結んでいて、かしずく一人の弟子が私であったなら、どんなにいいだろうと思った。私は薪を拾い、水を汲み、畑を耕すだろう。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
そこに婆やと小娘とにかしずかれて住んでいること、天野が隔日に泊りに来ること、天野の勢力の偉大なことなどより外に詳しい冬子の生活は知りようがなかった。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
朝夕あけくれ黄金丸が傍にかしずきて、何くれとなく忠実まめやかに働くにぞ、黄金丸もその厚意こころよみし、なさけかけて使ひけるが、もとこの阿駒といふ鼠は、去る香具師こうぐしに飼はれて、種々さまざまの芸を仕込まれ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
かしずき来たるよ。優しきドオリスの族、8385
翁の妻の、もう五十以上とみえる媼も出て来て、給仕にかしずきながら、話のそばで、貰い泣きしているのである。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝れた天稟てんぴんを守るために富貴によってかしずかれている者はまだ幸福である。優秀な天稟を「貧乏」のうちに露出して生くる者こそこの世の最も不幸なる者というべきであろう。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
... かれ頃日このごろはわれなずみて、いと忠実まめやかかしずけば、そを無残に殺さんこと、情も知らぬ無神狗やまいぬなら知らず、かりにも義を知るわがともがらの、すに忍びぬ処ならずや」「まことに御身がいふ如く、 ...
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
われ等がかしずきて来ぬるは神々ぞ。
その行々子の声に、彼は、自分がまだ、幼い頃、両親に伴われ、侍女や郎党にかしずかれ、常陸の方から、この大河を舟で渡って帰った日のことが思い出された。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かく存命ながらへて今日までも、君にかしずきまゐらせしは、妾がために雄の仇なる、かの烏円をその場を去らせず、討ちて給ひし黄金ぬしが、御情にほだされて、早晩いつかは君の御為おんために、この命をまいらせんと
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)