借金かり)” の例文
「何だい。人だかりがするじゃないか。借金かりでもあるようでみっともないったらありゃあしない。お離しよ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
伯父といふものは借金かりを拵へたり、恋病こひやまひつかれたり、猫にたゝられたりするをひにとつては、少くとも一人は無くてならない実用品なのである。伯父は言つた。
娘ばかりじゃねェ、失恋ふられた若い男、借金かりで首の廻らねェ、百姓おやじの首が、ゴロンと転がったり……。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「そうさ。僕の『すみれ』の借金かりを、君が全部払ってくれるということ。まあそれだけだな」
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
借金かりが出来る、田地は段々にひとの物になる、旦那今ま此の山中やまで、自分の田を作つて居るものが幾人ありますかサ、——其上に厄介やつかいなものがありますよ、兵隊と云ふ恐ろしい厄介物が
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
一町が間に一軒か二軒、煙草屋、酒類屋さかや、鑵詰屋、さては紙屋、呉服屋、蕎麦屋、菓子屋に至る迄、渠が其馬鹿に立派な名刺を利用して借金かりを拵へて置かぬ家は無い。必要があればドン/\借りる。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「あなたにはまだ、古い借金かりしていない。こんな物を貰っては」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
己が借金かりの為めにとられた杉山が
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
つまり、それだけの現金かねで、借金かりだらけの具足屋を、わしひとりのものに買い取ったのだ。ありがたくない荷物は、ありがたくない荷物に相違ないが、あの場合やむを得んと思ったのだ
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)