うつぶ)” の例文
手紙を三四行読みかけた時、お文がこんなことを言つたので、源太郎は手紙の上にうつぶいたなりに、首をぢ向けて、お文の方を見た。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
たった今生きた心地もなく顔をうつぶせていた癖に、次の来襲までのわずかの幕あいを互いに顔の品評をして興じていると
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
これを聞くなり、瀬木はその場にうつぶしました。そうして、しばらくしてから、一切の罪状を自白しましたが、それは俊夫君の推定と寸分も違いませんでした。
自殺か他殺か (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
維盛卿は至極の道理に面目なげに差しうつぶき、狩衣の御袖を絞りかねしが、言葉もなく、ツと次の室に立入り給ふ。跡見送りて瀧口は、其儘岸破がばと伏して男泣きに泣き沈みぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
見に行くから悪いのさと云った歌ちゃんの詞は、まるでうつぶいて居る間に聞いた。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
だ鍵盤にうつぶける梅子の横顔を、老女はくとながめ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
腕組をして考へてゐた源太郎は、またうつぶいて長い手紙に向つた。さうして今度は口の中で低く声を立てて読んでゐたが、読み終るまでに稍長いことかゝつた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
ある石塔の前に、うつぶしになって、一人の男が地面に横たわっていたからであります。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
小松殿は差しうつぶきて人におもてを見らるゝをものうげに見え給ふぞいぶかしき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
お駒はさツとべにいたやうな顏色になつて、うつぶいてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)