俯向うつむい)” の例文
二人ふたりが表てゞならんだ時、美禰子は俯向うつむいて右の手をひたひてた。周は人がうづいてゐる。三四郎は女の耳へくちを寄せた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つけよきやうにしてくれられんと男泣をとこなきに泣ながら氣のどくさうに言けるにぞ女房にようばうのおやすうらめしげにをつと十兵衞の顏を見つゝ餘りの事になみだこぼさずたゞ俯向うつむいて居たりける茲に十兵衞夫婦がなかに二人の娘ありあね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
男はやっと寛容くつろいだ姿で、呼ばれた方へ視線を向ける。呼ばれた当人は俯向うつむいている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上へ返して押たる者と相見え爪印がさかさに成て居るはコリヤ如何の譯なりやと云ければ九助はハツトばかりにて一言の返答へんたふもなく只落涙らくるゐしづ俯向うつむいて居たるにぞ理左衞門は迫込せきこんでコリヤ何ぢや御重役方よりの御不しんなるぞおのれ何心なく押たのかたゞしゆび痛所いたみしよにても有てぎやくに押たるやコリヤ何ぢや/\とせき立れど九助は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)