佞人ねいじん)” の例文
利休はびへつらう佞人ねいじんではなかったから、恐ろしい彼の後援者と議論して、しばしば意見を異にするをもはばからなかった。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
わしはあらゆる社会の最も善良な部分——没落した家の子供達とか女役者とか奸黠な悪人とか佞人ねいじんとか空威張からゐばりをする人間とか——を歓待した。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
佞人ねいじん楊再思が追従して、人は六郎の貌蓮花れんげに似たりと言うが、正に蓮花が六郎に似たるのみといったとあるに似た牽強じゃ。
さりとて、もし勅にそむけば、佞人ねいじんの輩はいよいよ我説がせつを虚大に伝え、この身また君をあざむく不忠の臣とならざるを得ない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佞人ねいじんを詠めり。此歌、殺風景なる佞人を題としながら其の調の高きために歌が氣高く聞ゆるなり。
万葉集巻十六 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかれども佞人ねいじんもこれを手にするを得べきものなれば決して無窮の価値を有するものにあらず、我の欲する所のものは悪人の得る能わざるもの、楽しみ得ざるものなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
身を全うし妻子をやすんずることをのみただ念願とする君側の佞人ねいじんばらが、この陵の一失いっしつを取上げてこれを誇大歪曲わいきょくしもってしょうの聡明をおおおうとしているのは、遺憾いかんこの上もない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「此歌上句ハ佞人ねいじんナドノ官ニ在テ君ノ明ヲクラマシテ恩光ヲ隔ルニたとへ、下句ハソレニ依テ細民ノ所ヲ得ザルヲ喩フル歟」(代匠記)等というが、こういう解釈の必要は毫も無い。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
天下兵馬の権を御司おんつかさどり遊ばす君が、取るにも足らぬ佞人ねいじんばらの讒言さんげんおきき遊ばして、御心おみだしなさるようではと、恐れながら主水之介、道々心を痛めて罷り越しましてござりまするが
の暦法を用い、いんくるまに乗り、周のかんむりをかぶるがいい。舞楽はしょうがすぐれている。𨜟ていの音楽を禁じ、佞人ねいじんを遠けることを忘れてはならない。𨜟の音楽はみだらで、佞人は危険だからな。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
わしの如き、老年になっても、まだ佞人ねいじんの策におち、檻車に生き恥をさらされるような不覚をするのだ。おことらはことに年も若いし、世の経験に浅い身だ。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さてさて、の国の人は嘘で固めているとみえる。わが蜀には、そんな媚言びげんやへつらいをいう佞人ねいじんはいない」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)