伍長ごちょう)” の例文
どうも、この、恋人の兄の軍曹ぐんそうとか伍長ごちょうとかいうものは、ファウストの昔から、色男にとって甚だ不吉な存在だという事になっている。
グッド・バイ (新字新仮名) / 太宰治(著)
名簿には、「熊本県、二十六歳、村農会書記、村青年団長、農学校卒」とあり、備考欄に、「歩兵伍長ごちょう、最近満州より帰還きかん
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
徴兵ちょうへいの三年を朝鮮の兵営へいえいですごし、除隊じょたいにならずにそのまま満州事変に出征しゅっせいした彼の長兄が、最近伍長ごちょうになって帰ったことが正をそそのかしたのだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「組長」わしの胸倉むなぐらすがりついたのは、電纜工場ケーブルこうじょう伍長ごちょうをしている男だった。「おせいさんが、大変だッ」
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
戊辰ぼしんえきには、その下で、歩兵伍長ごちょうとして率先して指揮に従ったなつかしい関係であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
人々がコーヒーを飲みしまったと思うと、憲兵の伍長ごちょうが入り口に現われた。かれは問うた
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
今特別に外出を伍長ごちょうにそっと頼んで許してもらって、これだけ布を買って来たんですが、ふちを縫ってくれる人がないんで弱って駆けつけたんです。大急ぎでやっていただけないでしょうか
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
第一の夫は行商人ぎょうしょうにん、第二の夫は歩兵ほへい伍長ごちょう、第三の夫はラマ教の仏画師ぶつがし、第四の夫は僕である。僕もまたこの頃は無職業ではない。とにかく器用を看板とした一かどの理髪師りはつしになりおおせている。
第四の夫から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
長男文豹は浅草鳥越明神とりこえみょうじんの傍に道場を開いていた剣客大野剣次郎の門人で、父に随って名古屋に来った後十四歳にして明倫堂武芸伍長ごちょうとなった。剣客大野は幕府講武所師範役伊庭軍兵衛いばぐんべえの高弟である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
伍長ごちょうのところへ行って、グレインを借りて持って来い』
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
伍長ごちょうから一躍して大隊長の資格を得たのであるが、その間に軍隊の諸方式はすっかり変っている。戊辰ぼしん戦争の経験は胆玉のことには役立っても、指揮者としては何にもならない。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
岡部一郎は、今やりっぱに成人して、ある機械化兵団きかいかへいだん伍長ごちょうになっていた。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鳥羽、伏見の戦争に動員された薩藩兵士のなかに、堀盛というその男は伍長ごちょうとして参加していた。卒を引きつれて守護した公卿くぎょうやしき清水谷きよみずだにであり、そこの食客に岡本監輔がいた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)