伊勢物語いせものがたり)” の例文
片側には書物が少々詰めてある。一番上に白隠和尚はくいんおしょう遠良天釜おらてがまと、伊勢物語いせものがたりの一巻が並んでる。昨夕ゆうべのうつつは事実かも知れないと思った。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふつうは清水しみずのそばで水をかけて食べたのだが、涙がその上にこぼれて干飯がやわらかになったと、『伊勢物語いせものがたり』という本には書いてある。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それ羅山らざん口号こうがういはく萬葉集まんえふしふ古詩こしたり、古今集こきんしふ唐詩たうしたり、伊勢物語いせものがたり変風へんぷうじやうはつするににせたり、源氏物語げんじものがたり荘子さうし天台てんだいしよたりとあり。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
梅花は予に伊勢物語いせものがたりの歌より春信はるのぶに至る柔媚じうびの情を想起せしむることなきにあらず。然れども梅花を見るごとに、まづ予の心をとらふるものは支那に生じたる文人趣味ぶんじんしゆみなり。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
余常に『伊勢物語いせものがたり』を以て国文中の真髄となし、芭蕉と蜀山人の吟咏を以て江戸文学の精粋なりとなせり。もしこれに注釈を施すとせんか正にわがくに古今の文学にわたりて論ぜざるべからざるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)