介錯かいしやく)” の例文
両親にもながの暇乞いとまごひをして、やがて肌を脱いで、刀を手に取つた。介錯かいしやく役にそば突立つゝたつてゐた伯父は落ついた声で呼びかけた。
左の脇腹に三寸余り切先きつさき這入はひつたので、所詮しよせん助からぬと見極みきはめて、平八郎が介錯かいしやくした。渡辺は色の白い、少し歯の出た、温順篤実な男で、年齢はわづかに四十を越したばかりであつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
狼藉らうぜきを御心のまゝにし給ひしが、七月八日高野山へ上り給ふて、うきめを見給ひけり、同十五日北野にて盲者をころし給ひしが、其刀にて介錯かいしやくせられし也、まことに昔は因果の程をつゝしめよ
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ここに居て、立派に死なれるのを拝見もすれば、介錯かいしやくもして上げます。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この上は詰腹……。尋常に切腹いたせ。叔父が介錯かいしやくしてやるぞ。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
うらみながき夜も早晩いづしか更行ふけゆはやあけ六ツに間も有じとて切腹の用意にかゝらるゝに明六ツの時計とけい鳴渡なりわたれば越前守は奧方おくがたに向ひせがれ忠右衞門切腹致さば其方介錯かいしやく致せ其方自害じがいせば予がぢき介錯かいしやくすべし予が切腹せば介錯かいしやくには大助致すべしと言付いひつけて又忠右衞門に向ひ最早もはや時刻じこくなるぞおくれを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)