ほん)” の例文
見ると、耳の根をほんのり紅くしてゐる。私は其儘室に入らうとすると、何時の間にか民子が來て立つてゐて
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あらかじめ観客の注意を散在せしめないために、階下の一帯を消燈しておいたので、廊下の壁燈がほんのりと一ついているだけ、広間サロンも周囲の室も真暗まっくらである。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
……饂飩屋うどんやかどに博多節を弾いたのは、転進てんじんをやや縦に、三味線さみせんの手を緩めると、撥を逆手さかてに、その柄ではじくようにして、ほんのりと、薄赤い、其屋そこの板障子をすらりと開けた。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見ると、耳の根をほんのり紅くしてゐる。私は其儘室に入らうとすると、何時の間にか民子が来て立つてゐて
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
痙攣けいれんの跡もなく、綿のように弛緩しているけれども、不審な事には、ほんのりあぶらが浮いている鎧通しだけは、かなり固く握り締めていて、腕を上げて振ってみても
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それに、開口のしたあたりではほんのりと匂っていた、石油ガスギャスの臭いがまったく今はない。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ほんのり色付いた桜の梢を雲のようにして、その上に寛永寺かんえいじあか葺屋根が積木のようになって重なり合い、またその背後には、回教サラセン風を真似た鋭い塔のさきや、西印度式の五輪塔でも思わすような
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)