仄白ほのしろ)” の例文
隅田川から仄白ほのしろい物が、一団ムラムラと飛び上がった。が、すぐ水面へ消えてしまった。それはかもめの群れらしかった。女は急に立ち止まった。そこに一軒の屋敷があった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一所いつしよりたひとは、みんはなれ/″\になつて、ことありいそがしくあるいてく。まちのはづれをると、左右さいういへのきから家根やねへかけて、仄白ほのしろけむりが大氣たいきなかうごいてゐるやうえる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
東へ、西へ、と置場処の間数けんすうを示した標杙くい仄白ほのしろく立って、車は一台も無かった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
築地海岸にむかえる空は仄白ほのしろ薄紅うすあかくなりて、服部の大時計の針が今や五時を指すと読まるる頃には、眠れる街も次第に醒めて、何処いずくともなく聞ゆる人の声、物の音は朝の寂静しずけさを破りて
銀座の朝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まづ仄白ほのしろ東雲しのゝめ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いっしょに降りた人は、みんな離れ離れになって、事あり気に忙がしく歩いて行く。町のはずれを見ると、左右の家の軒から家根やねへかけて、仄白ほのしろい煙りが大気の中に動いているように見える。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)