仁王立におうだ)” の例文
このとき、谷博士は、研究所の塔の下部にある広い実験室のまん中に、仁王立におうだちになって、気がおかしくなったように叫んでいる。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
仁王立におうだちになってにらみすえながら彼れは怒鳴どなった。子供たちはもうおびえるように泣き出しながらず仁右衛門の所に歩いて来た。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しゃがんでいた父親は、いつの間にか闇の中に仁王立におうだちになっていた。両手をふところに突込んだまま、チエ子の顔を穴のあくほどにらみつけていた。
人の顔 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二青年はパッと左右に分かれて、またをひろげ、両のこぶしを握って、仁王立におうだちににらみ合った。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼は八橋を切った刀の血糊ちのりをなめて、階子の上がり口に仁王立におうだちに突っ立って敵を待っていた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ちょうどその夜、わたしは奇妙きみょうおそろしいゆめをみた。わたしは、天井てんじょうの低い暗い部屋へ入って行くところだった。……と父が、鞭を手に仁王立におうだちになって、足をみ鳴らしていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
仁王立におうだちになつてゐた。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
……が……そうした死人じみた片頬に、弱々しい、泣き笑いじみた表情をビクビクさせると、彼は仁王立におうだちに突立ったまま、鼻の先の空間に眼を据えた。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼は池の岸に仁王立におうだちになって、短剣をふりかざし、這い上がる麗子を、ただ一突きと身構えていた。遊戯ではない。やっぱり本気なのだ。顔にも身体にも殺気がみなぎっている。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
どんなに飲んでも顔色もかえないほどの強酒ごうしゅな倉地が、こんなに酔うのは珍しい事だった。締めきった戸に仁王立におうだちによりかかって、冷然とした様子で離れて立つ葉子をまじまじと見すえながら
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
四馬剣尺は甲板に仁王立におうだちになり
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
俺は黙って鉄梯子てつばしごを昇って、中甲板ちゅうかんぱんの水夫部屋に来た。入口につかまって仁王立におうだちになったまま大声で怒鳴った。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二十面相は小型のたいまつを、ふりかざして、仁王立におうだちになっています。
妖星人R (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
起上る力も無いまま茣蓙ござの上に半身を起して、仁王立におうだちになっている梅公のスゴイ顔を見上げた。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
仁王立におうだちになった源造の顔は、赤鬼の様に血に染っていた。口から溢れる血が、両手でおさえていた為に、顔中に拡がったのだ、彼は舌を噛切って自殺しようとしたのだが、気力が足らず、失敗した。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)