乾燥はしゃ)” の例文
それに心附いた時は、もうコップ半分も残ってはいぬ時で、大抵はからからに乾燥はしゃいで咽喉のどを鳴らしていた地面に吸込まれて了っていた。
すこし風が吹いて土塵つちぼこりつ日でしたから、乾燥はしゃいだ砂交りの灰色な土をふんで、小諸をさして出掛けました。母親は新しい手拭てぬぐいかぶって麻裏穿あさうらばき
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
細君の言葉は珍らしく乾燥はしゃいでいた。笑談じょうだんとも付かず、冷評ひやかしとも付かないその態度が、感想に沈んだ健三の気分を不快に刺戟しげきした。彼は何とも答えなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふもと岐路えだみちを、天秤てんびんで、てくてくで、路傍みちばたの木の葉がね、あれしょうの、いい女の、ぽうとなって少し唇の乾いたという容子ようすで、へりを白くして、日向ひなたにほかほかしていて、草も乾燥はしゃいで
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬上から眺めると群集の視線は自己おのれ一人にあつまる、とばかりで、乾燥はしゃいだ高原の空気を呼吸するたびに、源の胸の鼓動は波打つようになりました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
梅雨期つゆどきのせいか、その時はしとしとと皮に潤湿しめりけを帯びていたのに、年数もったり、今は皺目しわめがえみ割れて乾燥はしゃいで、さながら乾物ひものにして保存されたと思うまで、色合、恰好かっこう、そのままの大革鞄を
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少し乾燥はしゃぎ気味になった津田はすぐ付け加えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
空気は乾燥はしゃいでくる、夫婦はかわき疲れて休場処を探したのですが、さて三軒屋は農家ばかりで、旅人のため蕎麦餅はりこしを焼くところもなし、一ぜんめし、おんさけさかな
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日中ひるなかの三味線の音が、乾燥はしゃいだ町の空気を通して、静かに響いて来た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)