乱髪らんぱつ)” の例文
旧字:亂髮
かくて信忠とその将士が、今し妙覚寺を発せんとしているとき、彼方から十人たらずの人影が、乱髪らんぱつ蒼面そうめん、各〻血に濡れて駈けて来た。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四人はいまにも、ぼうぼうたる乱髪らんぱつのやせさらばえた男が、草のあいだから顔を出すような気がして、あたりを見まわした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「相変わらずで面目次第もないわけです。」とごま白の乱髪らんぱつに骨太の指を熊手形くまでがたにさしこんで手荒くかいた。
二老人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
遊女に今紫があれば芸妓に芳町よしちょう米八よねはちがあった。後に千歳米坡と名乗って舞台にも出れば、寄席よせにも出て投節なげぶしなどを唄っていた。彼女はじきに乱髪らんぱつになる癖があった。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
乱髪らんぱつの女人に温み
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、槍を取った原士の影が、先をふさいで叫んだが、なお、血とも雨ともわかたぬ飛沫しぶきをついて、夜叉やしゃにも似た乱髪らんぱつのかげが、みよしの鼻に突っ立った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くしを入れない乱髪らんぱつ! 一人は四十幾歳、てっぺんがはげている。
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
らんのまわりにかげばかり見せて、ただワアワアとさわいでいる若侍わかざむらいたちを睥睨へいげいしながら、源氏閣げんじかくから桜雲台おううんだい本殿ほんでんへもどってくると、そこへあまたの武士ぶしに追いつめられてきた乱髪らんぱつ小童しょうどうがあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)