乱髪みだれがみ)” の例文
旧字:亂髮
兜を後にかけて、血しおどめの鉢巻に乱髪みだれがみをなであげ、健気けなげにもみずから陣頭に立っていたが、何思ったか
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれ、不可いけませんよう。」「可いてことさ。」せりあううちに後毛おくれげはらはら、さっと心も乱髪みだれがみ、身に振かかるまがつびのありともあわれ白露や、無分別なるものすなわちこれなり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ええ。」女はまた男のしめった乱髪みだれがみに接吻した。女はなんとも云えないほど悲しかった。泣きたいようであった。しかしその感動には一種の枯れた、乾燥ひからびたような心持ちが交っていた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
ぴんと、つるをかけたように、三平は胸を上げた。脇差のこうがいをぬいて、手ばやく、四日半の乱髪みだれがみでつけ、又、襟元えりもとの衣服のしわを、袴の下へきちっと引きのばして
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘は乱髪みだれがみになって、その花を持ったまま、膝に手を置いて、首垂うなだれて黙っていた。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大柄な婦人おんなで、鼻筋の通った、容色きりょう、少しすごいような風ッつき、乱髪みだれがみ浅葱あさぎ顱巻はちまきめまして病人と見えましたが、奥ののふちに立膝をしてだらしなく、こう額に長煙管をついて
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)