乱箱みだればこ)” の例文
旧字:亂箱
女中は矢田の洋服を入れた乱箱みだればこを片隅に運び、「今夜はどこもふさがっておりますから、お狭いでしょうけれど、ここで、どうぞ。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
洋服に着更へて、時計や巻烟草いれを乱箱みだればこから取つて、ポツケツトに入れてゐた博士は、細君の方を顧みて、かう云つた。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
とお菊はすぐ乱箱みだればこの中に入って居ります黄八丈の袷小袖あわせこそでを出して着換させる、しとねが出る、烟草盆が出ます。松蔭大藏は自分の居間へ坐りました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
乱箱みだればこたたんであった着物を無造作に引摺出ひきずりだして、上着だけ引剥ひっぱいで着込きこんだ証拠しょうこに、襦袢じゅばんも羽織もとこすべって、坐蒲団すわりぶとんわきまで散々ちりぢりのしだらなさ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あく、青年から、どうも嘘言うそいてすまなかった、軸はたしかに受取ったと云う端書はがきが来た。自分はその端書を他の信書といっしょに重ねて、乱箱みだればこの中に入れた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)