中実なかみ)” の例文
はいりしなに郵便箱をあけると桃色の此頃よく流行はやる様な封筒と中実なかみを一緒にした様なものが自分の処へ来て居た。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「しかし、クヮイズ侍が、どれほど陳腐ちんぷな頭なりや、西瓜すいかではないが、叩いて中実なかみを試みるのも一興だぞ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本の科学雑誌が色々ある、中には科学の抜殻だけを満載して中実なかみは空虚なのもあるようである。
雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
カチグリというものがある。カチとはくことで、すなわちクリの実を干し搗いて皮を去りその中実なかみ(胚を伴うた子葉)を出したものである。それには普通にシバグリを用うる。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
安くて見てくれさへよけれや、場ちがひもので結構、酒だつて宣伝のよくきいてゐるものなら中実なかみのことなんかどうだつてかまやしない、と放言して、品川と同じ品を納れるやうになつた
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
何本でもみんな製薬用にして返さぬと云うのだから、酒屋でも少し変におもったと見え、内々ないない塾僕に聞合ききあわせると、このせつ書生さんは中実なかみの酒よりも徳利の方に用があると云うので、酒屋は大に驚き
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
としくれに抽斗をあけて見たら、中実なかみ無しのカラばかりであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
己は箪笥たんす長持の中実なかみを気にした。
これは胡桃くるみからを手で叩いているようなものでしょう。外殻は何分にも堅固です。けれど中実なかみは虫がっているようです。兄弟相争い、諸臣の心は分離している。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中実なかみは悪魔の小僧でも
法 中実なかみは?
胚胎 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「あれには、渋沢の印形いんぎょうと、書附が入っているので、中実なかみは、からっぽだが、捨てずにいるのだ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中実なかみは金貨ばっかりだ。
「はははは。この男、虫食い瓜に似もやらず、中実なかみは甘いぞ。さては閨急ねやいそぎか」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)