世継よつぎ)” の例文
旧字:世繼
世継よつぎ公爵はまだごく若い人であったが、ともかく丁抹国内でドラーゲ公といえば、誰知らぬものない大貴族であり、大富豪でもあった。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
世継よつぎ物語には「わづか二十ばかりにてぞおはしける」とあり、今昔こんじゃくには「二十に餘る程」とあるので、二十一二歳であったかと思える。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それは、わたしも知っているのだ。知っているからこそお前に相談をするのだ。実はあの朝太郎というお子は、殿のお世継よつぎ吉松よしまつ様というかたなのだ。
三人の百姓 (新字新仮名) / 秋田雨雀(著)
「そうじゃ。偉いこッちゃ。亀山かめやま六万石のお家も、とうとう、お世継よつぎなしで、この秋は、絶えるかも知れんでのう」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以前一ツ橋様なんぞがお世継よつぎになろうものなら、それ、あの親子して狒々ひひのように大奥を荒し廻るのが怖ろしいと、将軍様の大奥から故障が出て、温恭院の御生母本寿院様などは
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
新らしき子らの世継よつぎ
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
郷左衛門は、その指一つを手にするごとに、龍山公の血統ちすじが絶滅してゆくのをよろこび、やがて、せがれ主水もんどを、主家の世継よつぎに立てる悪謀を夢みていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世継よつぎが定まる機会を待って、この事あるべき充分の理解が届いていたから、当主も干渉を試むる余地がなく、かくて理想通りの——形をたれこめて、心を自由にする新生活が得られたわけです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何といっても、先の見えない暗愚な将でもあり、故義元にとっては、不肖ふしょう世継よつぎであったといわれても仕方がない。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中天竺に阿育大王あいくだいおうとおっしゃる王様がございまして、そのお世継よつぎ倶奈羅太子ぐならたいしと仰せられました、一国の太子とお生れになりましたけれども、何の因果か、このお方がふとお眼をおわずらいになって
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今川家は当代の名族でわするぞ。足利将軍の統、もしお世継よつぎのなき時は、三河の吉良きら氏が継ぎ、吉良氏に人のなき時は、御当家今川家から立つことになっておる。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お世継よつぎの問題で、六万石のお国許くにもとの浮沈にかかわる一大事なのです。この羅門も、かねてご依頼をうけていることゆえ、安閑と、よそごとに眺めてはおられません」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
既定の事。おわすれあるまいが、明四日の昼、三法師君のお世継よつぎ御披露の祝事には、ぜひ御参列を
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ということわざもある位なので、良縁としてもらわれたのに、彼女にはまだ世継よつぎの子がなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世継よつぎ早々そうそうの、三家の葛藤かっとうや、大奥と表方との執拗な暗闘など、少しでも、そのかんの消息を聞きかじッている源次郎の目には、やはりその日の吉宗に、多少沈鬱ちんうつの気のあったことは見のがせません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)