不及およばず)” の例文
もつとも佛體そのまゝ引渡すには不及およばず、歡喜天の額上にはめ込みたる夜光の珠のみにて宜しく、それを拔き取りて、堂内の壇上に安置されたく候。
こときふにして掩避おほひさくるに不及およばず諸客しよきやくこれて、(無不掩口くちをおほはざるはなし。)からでは、こんなとき無不掩口くちをおほはざるはなし。)だとえる。てうにてはうするか、未考いまだかんがへずである。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
陳者のぶれば客歳六月該場開業之みぎり、各位御招待申上候御報謝として、華麗之引幕一張御恵賜被成下、御芳志之段難有ありがたく奉拝受候。就ては該場現今之光栄は申すに不及およばず、後代之面目と相成、大幸不過此これにすぎずと奉存候。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
忙ハすべテ、閑ニ不及およばず
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驚破すわといふ時、綿わたすじ射切いきつたら、胸に不及およばず咽喉のんど不及およばずたまえて媼はただ一個いっこ朽木くちきの像にならうも知れぬ。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
惣助の得意先は、皆、かれを称して恩田百姓と呼ぶ。註に不及およばず作取つくりどりのただ儲け、商売あきないで儲けるだけは、飲むもし、つも可し、買うも可しだが、何がさてそれで済もうか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)