下士かし)” の例文
また下士かしが上士の家に行けば、次の間より挨拶あいさつして後に同間どうまに入り、上士が下士の家に行けば、座敷まで刀を持ち込むを法とす。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
下士かしにわかに顔を挙げ、こう甲板士官に話しかけた。K中尉は思わず彼を見上げ、薄暗い彼の顔の上に何か真剣な表情を感じた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
河岸かしへ出るともう煙花はなびの見物人が続続ぞく/\と立て込んで居る。警固の兵士が下士かしれられて二けんおきぐらゐに配置されて立つて居た。河下かはしもへ向いて自分等は歩いて居るのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
或は上士じょうし下士かしとの軋轢あつれきあらざれば、士族と平民との間に敵意ありて、いかなる旧藩地にても、士民共に利害栄辱えいじょくともにして、公共のためをはかる者あるを聞かず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
すると十二インチ砲塔ほうとうの前に綺麗きれいに顔をった甲板士官かんぱんしかん一人ひとり両手をうしろに組んだまま、ぶらぶら甲板を歩いていた。そのまた前には下士かし一人ひとり頬骨ほおぼねの高い顔を半ば俯向うつむけ、砲塔を後ろに直立していた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
名は役頭やくがしらまたは奉行ぶぎょうなどと称すれども、下役したやくなる下士かしのために籠絡ろうらくせらるる者多し。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
維新の際に一身の進退と私は小士族の家にうまれ、その頃は封建時代の事で日本国中いずれも同様、藩の制度は守旧しゅきゅう一偏いっぺんの有様で、藩士銘々めいめいの分限がチャントまって、上士じょうしは上士、下士かしは下士と
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)