丈高たけたか)” の例文
丈高たけたかき草の道などで、近きが隠れ、遠きが現われ、いわゆる身代りの隠顕いんけん出没によって、追う者の眼を惑わし惑わし逃げていたのだ。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四五日前に除隊になった寺本の喜三さんも居る。水兵服すいへいふく丈高たけたかい男を誰かと思うたら、休暇で横須賀から帰って来た萩原の忠さんであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこらがまだまるっきり、丈高たけたかい草や黒い林のままだったとき、嘉十かじゅうはおじいさんたちと北上川の東から移ってきて、小さな畑を開いて、あわひえをつくっていました。
鹿踊りのはじまり (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
山吹がいまをさかりに咲いていた。丈高たけたかく伸びたのは、車の上から、花にも葉にも手が届く。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんな谷あいの山かげに、他の雑木にまじって、何んの木だか、目立って大きな葉をむらがらせた一本の丈高たけたかい木が、その枝ごとに、白くかがやかしい花を一輪々々ぽっかりと咲かせていた。……
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「新世界交響楽こうきょうがくだわ。」姉がひとりごとのようにこっちを見ながらそっと云いました。全くもう車の中ではあの黒服の丈高たけたかい青年もたれもみんなやさしいゆめを見ているのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
斯涼しい活画いきえを見て居る彼の眼前に、何時いつとはなしにランプの明るい客間パーラーがあらわれた。其処に一人の沈欝ちんうつな顔をして丈高たけたかい西洋人が立って居る。前には学生が十五六人腰かけて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
極めて丈高たけたかき女なりし、その手をふところにして肩を垂れたり。やさしきこゑにて
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そこまで来てしまうと、どっちを向いてももうほとんどさっきの人家らしいものが目に入らなかったようだが、ことによると私たちのまわりには私たちよりも丈高たけたかく雑草がい茂っていたのか知れぬ。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
まったくもう車の中ではあの黒服くろふく丈高たけたかい青年もだれもみんなやさしいゆめを見ているのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)