一鍬ひとくわ)” の例文
の少しくぼみのあるあたりを掘るのに、一鍬ひとくわ二鍬ふたくわ三鍬みくわまでもなく、がばと崩れて五六しゃく、下に空洞うつろいたと思へ。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そしてやにわに、松の根の北側にある一個の石を転がし、その石のあった下を目がけて、ざくと、一鍬ひとくわ入れはじめた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何しろ、一鍬ひとくわいれるとプンと強く硫黄が匂うのだから、胸が苦しくって飯も食えない。」
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この上さらに一鍬ひとくわ加うればもうその庵の軒端を切りかきもしそうな心持がします。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
水谷氏みづたにしかほ見合みあはせて『なにないでもいです。大森おほもり貝塚かひづか一鍬ひとくわでもつたといふことが、すでほこるにるのですから』など負惜まけをしみをつてたが、如何どうもそれではじつところ滿足まんぞく出來できぬ。
一鍬ひとくわ打ちな
おさんだいしよさま (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
ずかずか山のすそを、穿りかけていたそうでありますが、小児こどもが呼びに来たについて、一服いっぷくるべいかで、もう一鍬ひとくわ、すとんと入れると、急に土がやわらかく、ずぶずぶとぐるみにむぐずり込んだで。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)