一線ひとすじ)” の例文
停車場と機関庫の間に一線ひとすじの海が光っていた。そこに快走艇ヤットの赤い三角帆がコルシカからの微風を享楽していた。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
二郎が家に立ち寄らばやと、靖国社やすくにしゃの前にて車と別れ、庭に入りぬ。車をりし時は霧雨やみて珍しくも西の空少しく雲ほころび蒼空あおぞら一線ひとすじなお落日の余光をのこせり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そのをかこめる低き鉄柵てっさくをみぎひだりに結ひし真砂路まさごじ一線ひとすじに長く、その果つるところにりたる石門あり。りて見れば、しろ木槿もくげの花咲きみだれたる奥に、白堊しろつち塗りたる瓦葺かわらぶきの高どのあり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
午前あさの三時から始めた煤払いは、夜の明けないうちに内所をしまい、客の帰るころから娼妓じょろうの部屋部屋をはたき始めて、午前ひるまえの十一時には名代部屋を合わせて百幾個いくつへやに蜘蛛の一線ひとすじのこさず
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
あかい血が一線ひとすじ長くレールを染めた。
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)