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ひんにぎ
で、
老爺は
今度は
自分の
刻んだ
魚を、これは
又、
不状に
引握つたまゝ
斉しく
投げる、と
潵が
立つたが、
浮草を
颯と
分けて、
鰭を
縦に
薄黒く、
水際に
沈んでスツと
留る。
渋色の
逞しき手に、
赤錆ついた大出刃を不器用に
引握って、
裸体の
婦の
胴中を切放して
燻したような、赤肉と黒の皮と、ずたずたに、血筋を
縢った中に、骨の薄く見える
「へい。」と
巌丈に
引握つた
大きな
掌をもつさりと
開ける、と
光る。