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そんみん
甲駿二国のさかいを、
蛇の
目まわりに、ゆうゆうと見てまわって、とうとう、この
法師野の部落に、
和田呂宋兵衛一族の焼けだされどもが、よわい
村民をしいたげているようすをとくと見さだめた。
然し
村民の
間にはかういふ
非常時に
對する
訓練がよく
行屆いてゐたと
見え、
老幼男女第一に
火災防止に
力め、
時を
移さず
人命救助に
從事したのであつた。
もし
村民の
訓練が
不行屆きであり、
或は
火を
消すことを
第二にしたならば、
恐らくは
全村烏有に
歸し、
人命の
損失は
助けられた
五十八名の
中にも
及んだであらう。
四百餘の
村民をも
埋めてしまつたのである。