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ぜったいぜつめい
彼は、
絶体絶命を
感じた。
数秒の
後に、
自分の
体が、
幾十
尺の
高いところから
地上に
落下して
粉砕するのだと
意識するや、
不思議にも、
気力が
出て
跳ね
上がった。
寸秒の
危機は
目前、おもわず、
額や
腋の下から、つめたい
脂汗をしぼって、ハッと、ときめきの息を一つ
吐いたが——その
絶体絶命のとっさ、ふと、指さきに
触れたのは、さっき
ああ
絶体絶命……そうだ。
何時か
貴方は
露西亜には
哲学は
無い、しかし
誰も、
彼も、
丁斑魚でさえも
哲学をすると
有仰ったっけ。しかし
丁斑魚が
哲学をすればって、
誰にも
害は
無いのでしょう。