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きよざい
トタンに
向うざまに
突出して
腰を
浮かした、
鋸の
音につれて、
又時雨のやうな
微な
響が、
寂寞とした
巨材の
一方から
聞えた。
其の
木挽の
與吉は、
朝から
晩まで、
同じことをして
木を
挽いて
居る、
默つて
大鋸を
以て
巨材の
許に
跪いて、そして
仰いで
禮拜する
如く、
上から
挽きおろし、
挽きおろす。
と
思ひ/\、
又この
偉大なる
樟の
殆ど
神聖に
感じらるゝばかりな
巨材を
仰ぐ。