腰掛こしかけ)” の例文
一体いつたい東海道とうかいだう掛川かけがは宿しゆくからおなじ汽車きしやんだとおぼえてる、腰掛こしかけすみかうべれて、死灰しくわいごとひかへたから別段べつだんにもまらなかつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれどもそのこどもはきょろきょろへやの中やみんなの方を見るばかりでやっぱりちゃんとひざに手をおいて腰掛こしかけに座っていました。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
するもあり彌々當日に相成ければ名主町役人差添さしそひにて屑買くづかひ一同南町奉行所の腰掛こしかけ相揃あひそろやがよび込に隨ひ白洲しらす這入はひりかたはらを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たなには、本や薬品の壜らしいものも並んでいる。椅子が一つ横たおしになっている。他の腰掛こしかけは、ちゃんとしている。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かう方面はうめん趣味しゆみのない宗助そうすけは、もとより菜根譚さいこんたん何物なにものなるかをらなかつた。あるひとくるま腰掛こしかけひざならべてつたとき、それはなんだといてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今日も半円祠堂のまんなかの腰掛こしかけには崖邸の夫人真佐子まさこが豊かな身体からだつきをそびやかして、日光を胸で受止めていた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
祖母おばあさんの着物きもの塲所ばしよはおうち玄關げんくわんそばいたきまつてました。そのおにはえるあかるい障子しやうじそば祖母おばあさんの腰掛こしかけはたいてありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
風のあたらない、日のよくさす、暖かい片隅かたすみに、腰掛こしかけをもちだして、私は正夫に本をよんできかせながら、二人とも時々目をあげて、こずえの柿をながめました。
山の別荘の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
『いや貴方あなたは。こまつたな、まあおきなさい。』と、院長ゐんちやう寐臺ねだいそば腰掛こしかけけてせむるがやうにくびる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
甘酒だの五目飯ごもくめしなどひさいでいる腰掛こしかけ茶屋で、そこは門司もじから小倉こくらへの中間ぐらいな大道路の傍らで山というほどでもない小高い丘の登り口にある角店である。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
腰掛こしかけ食いが驚くほど増えて来て、男と同じように「わたしはトロがいい」「いや赤貝あかがいだ」「うにだ」と生意気なまいきをやって、噴飯ふんぱんさせられることしばしばという次第だ。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
羊の毛皮の外套を著た二三人の百姓が、門の前の腰掛こしかけに坐って、申し合わせたように欠伸をしている。
私は、リード夫人の指圖した部屋の中へ連れ込まれて、腰掛こしかけの上へ投げ出されてゐた。私は、盲動的に、バネのやうにね起きようとしたが、二組の手がすぐ取り押へた。
與吉よきち不自由ふじいうから燐寸マツチうばふやうにしてけてた。卯平うへい與吉よきちのするまゝにして、丸太まるたはしはなした腰掛こしかけ身體からだゑてやつれたやはらかなしかめてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
朝、家鴨あひるの子のようにたらいの中をかきまわす時の音楽おんがくもあったし、ピアノの前の腰掛こしかけに上って、いやな稽古けいこをする時の音楽も——またその腰掛こしかけから下る時の特別とくべつ音楽おんがくもあった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
例の老僕ろうぼくが、無愛想なでわたしをじろりと見ると、しぶしぶ腰掛こしかけからしりをもたげた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
大磯おほいそちかくなつてやつ諸君しよくん晝飯ちうはんをはり、自分じぶんは二空箱あきばこひとつには笹葉さゝつぱのこり一には煮肴にざかなしるあとだけがのこつてやつをかたづけて腰掛こしかけした押込おしこみ、老婦人らうふじんは三空箱あきばこ丁寧ていねいかさねて
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
緑の上衣の若者を一寸ハムレットかと思うたら、そうではなくて、少し傍見わきみをして居た内に、黒い喪服もふくのハムレットが出て来て、低い腰掛こしかけにかけて居た。余は熟々つくづくとハムレットの顔を見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あにさん何してるのだと舟大工ふなだいくの子の声をそろによればその時の小生せうせいあにさんにそろ如斯かくのごときもの幾年いくねんきしともなく綾瀬あやせとほざかりそろのち浅草公園あさくさこうえん共同きようどう腰掛こしかけもたれての前を行交ゆきか男女なんによ年配ねんぱい
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
その車は外を青「ペンキ」にて塗りたる木の箱にて、中に乗りし十二人の客はかたこし相触れて、膝は犬牙けんがのように交錯こうさくす。つくりつけの木の腰掛こしかけは、「フランケット」二枚敷きても膚を破らんとす。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
のぶは丁寧に自分の腰掛こしかけた草をけて老母を腰かけさせ升た、私は麦藁むぎわら螢籠ほたるかごを編んで居りましたから、両人の話しを聞くとはなしに聞いて居り升た。のぶはい話し合手を見つけたといふ調子で
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
私は甲板の腰掛こしかけに腰をおろして海風かいふう衣袂いべいひるがえすに任している。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
一体東海道掛川かけがわ宿しゅくから同じ汽車に乗り組んだと覚えている、腰掛こしかけすみこうべを垂れて、死灰しかいのごとくひかえたから別段目にも留まらなかった。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しばれと云聲の下々した/\役人はつと立掛たちかゝるを周藏木祖兵衞種々と詫入わびいり漸々やう/\三五郎を外の腰掛こしかけへ出しゝかば跡は寂寞ひつそりとなり理左衞門大音だいおんあげコリヤ九助假令たとへみぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
室中へやじゅうのひとたちは半分うしろの方へ倒れるようになりながら腰掛こしかけにしっかりしがみついていました。ジョバンニは思わずカムパネルラとわらいました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
腰掛こしかけに腰をかけて、仲よく二人の人間が話をしていると、その腰掛が、とちゅうでおこってしまって、あッというまに、腰掛は二人をそこへ尻餅しりもちをつかせて
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『いや貴方あなたは。こまったな、まあおきなさい。』と、院長いんちょう寐台ねだいそば腰掛こしかけけてせむるがようにくびる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
應接間おうせつまとほると、おほきな洋卓テーブル周圍まはり天鵞絨ビロードつた腰掛こしかけならんでゐて、あはしてゐる三四人さんよにんが、うづくまるやうあごえりうづめてゐた。それがみんなをんなであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
高い腰掛こしかけに坐つて、ヂョウジアァナは鏡に向つて、髮をつてゐた。屋根裏の抽斗の中で彼女が前にさがしておいた造花ざうくわと色のせた羽根はねを捲き毛に編み込まうといふのだ。
面白おもしろ床屋とこやがそこへ出來できました。腰掛こしかけはおうち踏臺ふみだいひ、むねけるきれおほきな風呂敷ふろしきひました。床屋とこやをつとめる伯父をぢさんのはさみは、祖母おばあさんたち針仕事はりしごとをするとき平常ふだん使つかはさみでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そしてそこで、じゃりのうえの木の腰掛こしかけにすわらせられました。
銀の笛と金の毛皮 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
室中へやじゅうのひとたちは半分はんぶんうしろの方へたおれるようになりながら腰掛こしかけにしっかりしがみついていました。ジョバンニは思わずカムパネルラとわらいました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まつには屈強くつきやう腰掛こしかけなりと心中に點頭うなづきこれよりはべつして萬事に氣をつけ何事も失費しつぴなき樣にしていさゝかでも利分を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
車室しゃしつうちはさのみ不潔ふけつ人間にんげんばかりではなかったが、ミハイル、アウエリヤヌイチはすぐ人々ひとびと懇意こんいになってたれにでもはなし仕掛しかけ、腰掛こしかけから腰掛こしかけまわあるいて、大声おおごえ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
先生は白絣しろがすりの上へ兵児帯へこおびを締めてから、眼鏡のくなったのに気が付いたと見えて、急にそこいらを探し始めた。私はすぐ腰掛こしかけの下へ首と手を突ッ込んで眼鏡を拾い出した。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
腰掛こしかけあがんで、つき硝子窓がらすまどに、ほねいて凍付いてついてたのが、あわてて、向直むきなほつて、爪探つまさぐりに下駄げたひろつて、外套ぐわいたうしたで、ずるりとゆるんだおびめると、えり引掻合ひつかきあはせるとき
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
スキャチャード先生が彼女の生徒のバーンズを鞭でぶつた日の夕方、私は、お友達なしで、けれど淋しいとも思はないで、いつものやうに腰掛こしかけ卓子テエブルや笑つてゐる連中の間を歩いてゐた。
そのとき遅く、かのとき早く、どしんと正面から腰掛こしかけがとんできて
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もやゝさわやかにつて、ほつ呼吸いきをしたとき——ふと、いや、はじめてとはう、——かれけたはすに、むかがは腰掛こしかけに、たゝまりつもきりなかに、ちておちかさなつたうつくしいかげた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
車室しやしつうちはさのみ不潔ふけつ人間計にんげんばかりではなかつたが、ミハイル、アウエリヤヌヰチはすぐ人々ひと/″\懇意こんいになつてたれにでもはなし仕掛しかけ、腰掛こしかけから腰掛こしかけまはあるいて、大聲おほごゑで、這麼不都合こんなふつがふきはま汽車きしやいとか
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)