つな)” の例文
真ッ二つ! 孫兵衛の息と手が、さっと放たれようとした刹那せつな甲比丹かぴたんの三次やほかの者たちと、こっちの縁側にいた見返りおつな
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つな家来けらいもんのすきまからのぞいてみますと、白髪しらがのおばあさんが、つえをついて、かさをもって、もんそとっていました。家来けらい
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あまり暴れるので俺が大きなつなでぐるぐるまきにしばっておいたのに、どんなに頑丈がんじょうにしといても何時の間にか抜けてしまうのだ
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
ポーデル博士は、空飛ぶ樽を、草むらの中にかくしたあとで、石段をのぼって玄関の前に立ち、上からぶら下っているつなを二三度ひいた。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つながついています。長い綱が、煙突の頂上に出っぱった鉄のわくにくくりつけてあり、そこから豹のからだまで、綱がついているのです。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ちょうど、それとおな時刻じこくに、てらかねつきどうにつるしてあるかねふとつなれて、かねは、ひびきをたててしたちたのでした。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あまがえるはみんなでとのさまがえるを囲んで、石のあるところへ連れて行きました。そして一貫目ばかりある石へ、つなを結びつけて
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
離るるとも、ちかいさえかわらずば、千里を繋ぐつなもあろう。ランスロットとわれは何を誓える? エレーンの眼には涙があふれる。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生の笑顔えがおがだんだんはっきりと近づいてくると、先生の両手が見えないつなをひっぱっていることがわかって、みんな笑った。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
最後に残されたたった一つの救いのつながぷッつりときれて、泣くに泣かれぬ絶望の淵に投げ込まれてしまったのを私は感じた。
兎角とかくするほどむすびのつなかれて、吾等われら兩人りやうにんせたる輕氣球けいきゝゆうは、つひいきほひよく昇騰しようたうをはじめた。櫻木大佐等さくらぎたいさら一齊いつせいにハンカチーフをつた。
厘錢りんせん黄銅くわうどう地色ぢいろがぴか/\とひかるまで摩擦まさつされてあつた。どつぺをいたのがさらおやになつて一ごとにどつぺはいてつなへつける。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかるに絶壁ぜつへきの所は架を作るものもなければ鮏もよくあつまるゆゑ、かの男こゝにたなをつりおろし、一すぢのなはを命のつなとして鮏をとりけり。
君子きみこのびをしてむすばれた電氣でんきつなをほどいてゐた。とそのときはゝあたかもそのひかりにはじかれたやうにぱつとあがつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
テントのてっぺんからは四方八方しほうはっぽうへ、赤と青の電灯でんとうつながはりわたされて、それがみずうみからいて来る夜風にゆらりゆらりとゆれかがやいています。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
中には階上から川底へ針金はりがね架線かせんを渡し、それへバケツを通して、つなでスルスルと水をげるようにしたのもある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
でも、そこは、ふかいのなんのといって、どんなにながくつなをおろしても底にとどかないというくらいふかいのです。
ヂュリ なみだ創口きずぐちあらはしゃるがよい、そのなみだころにはロミオの追放つゐはうくやわしなみだ大概たいがいつけう。そのつなひろうてたも。
したにゐたひとつなをひきそこなつて、つながぷっつりとれて、うんわるくもしたにあつたかなへうへちてまはしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
五二 馬追鳥うまおいどり時鳥ほととぎすに似てすこし大きく、はねの色は赤に茶をび、肩には馬のつなのようなるしまあり。胸のあたりにクツゴコ(口籠)のようなるかたあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
奥は、それをとこの間へ持って行って、この鹿の角の刀かけに掛けた。その時は、勿論、このように鞘から柄にかけてつなでなぞからめてなかったのである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
井戸ゐどくるまにてつなながさ十二ひろ勝手かつて北向きたむきにて師走しはすそらのからかぜひゆう/\とふきぬきのさむさ、おゝえがたとかまどまへなぶりの一ぷんは一にのびて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つたばかりで(考慮かんがへのないはづかしさは、れをいたときつなには心着こゝろづかなかつた、勿論もちろんあとことで)ときは……とつたばかりで、くちをつぐんだ。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
着物は俺のと換へてやつた上、歸りに一杯おごるよ。——見るが宜い、俺は大釜を押しも突きもしたわけぢやない。たゞちよいとう足でつなを踏んだだけだ。
二のあしうら火に燃えて關節つがひめこれがために震ひ動き、そのはげしさはつなをも組緒くみををも斷切るばかりなりき 二五—二七
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それからやっとからだを起こし、部屋へやすみへ歩み寄ると、天井からそこに下がっていた一本のつなを引きました。すると今まで気のつかなかった天窓が一つ開きました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その時大阪では焼ける家の柱につなを付けて家を引倒ひきたうすと云うことがあるその網を引張ひっぱってれと云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そして、そのおわびのしるしに、一ぴきの白いぬにぬのを着せ、すずかざりをつけて、それを身内みうちの者の一人の、腰佩こしはきという者につなで引かせて、天皇に献上けんじょういたしました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
きゝいしくも申されたりをさなくして兩親ふたおやはなるゝ者は格別かくべつに發明なりとか婆も今は浮世にのぞみのつなきれたれば只其日々々を送り暮せどはからずも孫君まごぎみと同年ときゝ思はず愚痴ぐち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ですから、松の木にまきつけたつなをさがすつもりで、牛の腹をいつまでもなでまわしたりします。しかたがないので、茶屋のおよしばあさんが、手綱たづなをといてやります。
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
望みのつなも切れはてて一家三人はたがいにため息をついた。もとより女と子どものことである、心は勇気にみちてもからだの疲労ひろうは三日目の朝にはげしくおそうてきた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
三十前からつなでは行かぬ恐ろしの腕と戻橋もどりばしの狂言以来かげの仇名あだな小百合さゆりと呼ばれあれと言えばうなずかぬ者のない名代なだい色悪いろあく変ると言うは世より心不めでたし不めでたし
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
昔話のつな金時きんときのやうに、頼光らいこうの枕もとに物々しく宿直とのゐを仕つるのはもう時代おくれである。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
そしてまた、高い起重機きじゅうきや、ドックや、大きな倉庫そうこや、兵器庫や、弾薬庫だんやくこや、つなよりや、岩にあたってくだけたために使われなくなっている大きなドックなどを見ました。
下につないであつた山筏やまいかだの上へ落ちると、してゐた道中差だうちゆうざしがスルリと鞘走さやばしつて、それがいかだもやつたつなにふれるとプツリと切れていかだがこはれるとガラ/\/\と流れ出しました。
醒ヶ井さめがいのおつなは、やるといったこときっとやるってこと、菊弥様、覚えておいで」
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
茂兵衛には男子がなくて、おつなとお美津という二人の娘がいた。父親同志が故郷での親友だったので、正吉は他の奉公人たちとは別に目をかけられ、二人の娘とは友達のようにして育った。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
監督はにしたつなを彼の首にかけた。最初に太いのを、次に細いのを。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
つなおろして岩角を攀登はんとし、千辛万苦つゐに井戸沢山脈の頂上てうじやういたる、頂上に一小窪あり、涓滴けんてきの水あつまりてながれをなす、衆はじめて蘇生そせいの想をなし、めしかしぐを得たり、はからざりき雲霧漸次にきた
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
わたしは彼を細い板ぎれにすわらせて、すぶってやり始めた。彼は、はばの広い金モールのついた、新調らしい厚地のラシャの制服を着て、身じろぎもせず坐ったまま、しっかりつなにつかまっていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
母屋もやかたあけ三丈の鈴のつな君とひくたびきぬもてまゐる
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
つな投げよ。』一時に水夫かこ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つなは好いのですか」
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一寸法師いつすんほふしつなわたり
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
頼光らいこうはさっそくつなにいいつけて、さっき神様かみさまからいただいた「かみ方便ほうべんおに毒酒どくざけ」をして、酒呑童子しゅてんどうじ大杯おおさかずきになみなみとつぎました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さくらみきから、校舎こうしゃまどわたしてあるつなには、無数むすうまるはたや、満洲国まんしゅうこくはたや、中華民国ちゅうかみんこくはたなどが、つるしてあった。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
吉十郎は、ぶらんこのつなをつたって天井の丸太にのぼりつき、そこから、テントのあわせめをくぐって、テントの上へ出てしまったのです。
サーカスの怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
博士の足が、実験台よりもすこし高くなったところで、小山嬢は、手にしていたつなを壁際の鉄格子てつごうしにしっかりと結びつけた。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
勘太郎は鬼の鼻の穴に引っかかっている自在鉤をそのままにして、のこりのつなで両手をうしろに回してしばりあげ、先に歩かせながら村へ帰って来た。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
伊那丸は、金剛力こんごうりきをしぼって、波のほうへ、つなをひいてみたが、荒磯あらいそのゴロタ石がつかえて、とてもうごきそうもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)