)” の例文
旧字:
裾野にそよぐすすきが、みな閃々せんせんたる白刃はくじんとなり武者むしゃとなって、声をあげたのかとうたがわれるほど、ふいにおこってきた四面の伏敵ふくてき
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そっちの方から、もずが、まるで音譜おんぷをばらばらにしてふりまいたようにんで来て、みんな一度いちどに、ぎんのすすきのにとまりました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
露を其のまゝの女郎花おみなえし浅葱あさぎの優しい嫁菜の花、藤袴、また我亦紅われもこう、はよく伸び、よく茂り、慌てた蛙は、がまと間違へさうに、(我こそ)と咲いて居る。
玉川の草 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
縁側の隅に片付けた、お月見の供え物は、すすきまで泣き濡れたようにしおれて、お団子が浅ましく陽に照されて居るのも、惨劇の後の痛ましさを強調するようでした。
ある時その燕は二人ふたりっきりでお話をしようと葦の所に行っての出た茎先にとまりますと、かわいそうにれかけていた葦はぽっきり折れて穂先がれてしまいました。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
僕等のいるのは何もない庭へ葭簾よしず日除ひよけを差しかけた六畳二間ふたまの離れだった。庭には何もないと言っても、この海辺うみべに多い弘法麦こうぼうむぎだけはまばらに砂の上にを垂れていた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夕方は、まんまるなあかい日が、まんじりともせず悠々ゆうゆうと西に落ちて行く。横雲よこぐもが一寸一刷毛ひとはけ日の真中を横になすって、画にして見せる。最早もうはらんだ青麦あおむぎが夕風にそよぐ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ちょうど、おかしたは、むぎばたけでした。ふさふさしたが、かぜのために、波打なみうっていました。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
が無いという返辞の仕方だ。何とも無いと云われても、どうも何か有るにちがい無い。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と、またもやごうぜんたる音がして、全船ぜんせん震動しんどうした、同時に船は、木の葉のごとく巨濤きょとうにのせられて、中天ちゅうてんにあおられた。たのみになした前檣ぜんしょうが二つに折れたのである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そうことばのにでたときにも、自分は調子ちょうしにのって気休きやすめをいうたこともあったのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あきのへにらふ朝霞あさがすみいづへのかたこひやまむ 〔巻二・八八〕 磐姫皇后
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ほとほとに西日けうとくなりにけり霙がちなるがまたち (一二九頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さて翌年の十月鶴二羽かの農人のうにんが家のにはちかくまひくだり、稲二けいおとし一こゑづゝなきて飛さりけり。主人あるじひろひとりて見るにそのたけ六尺にあまり、も是につれて長く、の一えだに稲四五百粒あり。
かね婆さんが給仕盆を差しだしながら、をつぐように話しかけると
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
左手の渚には、波がやさしい稲妻いなずまのように燃えて寄せ、右手の崖には、いちめん銀や貝殻かいがらでこさえたようなすすきのがゆれたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
もとへもどして、みじかにかまえなおした神保大吉じんぼうだいきちは、咲耶子さくやこが右へよれば右へ、左へよれば左へ、ジワジワとおしていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
非常な手数をかけて一々燕麦をぬいたが、最早もう肝腎かんじんの麦は燕麦に負けてそのせこけたものになって居た。肥料が肥料を食ってしまったのである。世には斯様こんな事が沢山ある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかしまばらにえ伸びた草は何か黒いに出ながら、絶えず潮風しおかぜにそよいでいた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
五位鷺ごゐさぎはたらくこと。ふね一艘いつそうぐなれば、あしかぜ風情ふぜいにもまらず、ひら/\と上下うへしたつばさあふる。とふねはうは、落着済おちつきすましてゆめそらすべるやう、……やがてみぎははなす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さすがに血の跡はありませんが、今洗ったと言わぬばかりに、一尺以上のから、けら首へかけて濡れているではありませんか。懐紙かいしを出して強くくと、紙の上にはまぎれもないあぶらがベッとり。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
さて翌年の十月鶴二羽かの農人のうにんが家のにはちかくまひくだり、稲二けいおとし一こゑづゝなきて飛さりけり。主人あるじひろひとりて見るにそのたけ六尺にあまり、も是につれて長く、の一えだに稲四五百粒あり。
砂原すなはらのうへに白々しろじろにづるはしろがねすすきといふにし似たり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
すゝきさきもになつた。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
左手のなぎさには、なみがやさしい稲妻いなずまのようにえてせ、右手のがけには、いちめんぎん貝殻かいがらでこさえたようなすすきのがゆれたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
藤吉郎は、縁を下りて、武者わらじのをむすんでいた。その彼をからかい半分に、万寿が手に持っていたすすきで、彼のえりもとをくすぐった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父親てゝおや医者いしやといふのは、頬骨ほゝぼねのとがつたひげへた、見得坊みえばう傲慢がうまん其癖そのくせでもぢや、勿論もちろん田舎ゐなかには苅入かりいれときよくいねはいると、それからわづらう、脂目やにめ赤目あかめ流行目はやりめおほいから
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其れにび出される様に、むぎがつい/\と伸びてに出る。子供がぴいーッと吹く麦笛むぎぶえに、武蔵野の日は永くなる。三寸になった玉川のあゆが、密漁者の手からそっと旦那の勝手に運ばれる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
きんじて身をのごふ事をせずぬれたるまゝにて衣服きるものちやくす。するには米稿いねわらの方をくゝしたるを扇のやうにひらきてこれに坐す、(此わらは七五三しめのこゝろとぞ)かりにも常のごとくにはらず。
かて味噌みそなべとをしょって、もう銀いろのを出したすすきの野原をすこしびっこをひきながら、ゆっくりゆっくり歩いて行ったのです。
鹿踊りのはじまり (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
本陣、おん大将の寝所幕しんじょまくのあたりにも、夜詰よづめのさむらい警固けいごするやりが、ときおり、ピカリ、ピカリとうごいてまわる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父親てておやの医者というのは、頬骨ほおぼねのとがったひげの生えた、見得坊みえぼう傲慢ごうまん、そのくせでもじゃ、もちろん田舎いなかには刈入かりいれの時よくいねが目に入ると、それからわずらう、脂目やにめ赤目あかめ流行目はやりめが多いから
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(風だよ、草のだよ。ごうごうごうごう。)こんなことばが私の頭の中で鳴りました。まっくらでした。まっくらで少しうす赤かったのです。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
兼好にも、がない。「なんで死ぬ気に?」と問いたくもなるが、人が死ぬ気になるまでには、おおむね、人にも話せぬ秘密やら事情があろう。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まつすぎ田芹たぜり、すつとびた酸模草すかんぽの、そよともうごかないのに、溝川みぞがはおほふ、たんぽゝのはなまめのつるの、たちまち一しよに、さら/\とうごくのは、ふなどぜうには揺過ゆれすぎる、——ひる水鶏くひなとほるのであらう。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かばの木はまだまっ青でしたがその辺のいのころぐさはもうすっかり黄金きんいろのを出して風に光りところどころすずらんの実も赤く熟しました。
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、路傍ろぼうの稲田のれたにうれしさを覚え、朝の陽にきらめく五穀の露をながめては天地の恩の広大こうだいに打たれ、心がいっぱいになるのだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みちにはすずめのかたびらがを出していっぱいにかぶさっていました。私たちはそこから製板所せいばんしょ構内こうないに入りました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まだ三十にならぬ身が、道のみの字でも、分ったなどと高言するようじゃったら、もうその人間のは止まりよ。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちめんすすきであった。函南かんなみ裾野すそのゆるい傾斜をいて、その果ての遠い町の屋根に、冬日はうすずきかけていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三疋がカン蛙のおうちに着いてから、しばらくたって、ずうっと向うから、ふきの葉をかざしたりがまのを立てたりしてお嫁さんの行列がやって参りました。
蛙のゴム靴 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
巻雲けんうんさえうかびそうに見えるとこを、三羽のたかかなにかの鳥が、それともつるかスワンでしょうか、三またのやりのようにはねをのばして白く光ってとんで行きます。
イーハトーボ農学校の春 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
黄河の水ひとたび溢るれば、何万人の人命は消えますが、蒼落そうらくとしてまたみのり人は増してゆく。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どんどん北の方へ飛び、野原はひっそりとして人も馬も居ず、草には一杯いっぱいに出ていました。
鳥をとるやなぎ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
黙ってし、黙って受け、九叔も話のがないように、むっそり飲んでいるほかはない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いいながらその同心は、不意に素槍のをしごいて、樽の横腹をそれで突きとおそうとした。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一昨日おとといからだんだん曇って来たそらはとうとうその朝は低い雨雲を下してまるで冬にでも降るようなまっすぐなしずかな雨がやっとを出した草や青い木の葉にそそぎました。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
野原やおかには、のある草や穂のない草が、南の方からだんだん生えて、とうとうそこらいっぱいになり、それからかしわまつも生え出し、しまいに、いまのつの森ができました。
狼森と笊森、盗森 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その朝は、千歳の女将が姿を見せなかったので、船の外人を送ってきた芸妓たちも、何となく、つぎがなく、まじめに挨拶をして、それぞれの方角へ、俥のほろをかぶって、帰って行った。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちまち床からベランベランベランと大きな緑色のばけもの麦の木が生え出して見る間に立派な茶色のを出し小さな白い花をつけました。舞台は燃えるように赤く光りました。